第4章 例えるならば
「私だってそんな思わせぶりをされたら気になって仕方ありませんよ。待つのは嫌いじゃありませんが正直性分じゃない」
「そんな大層なことじゃないって。止めろ。何かプレッシャーを感じる。物凄くいいことを言わなきゃいけないような気がしてきた」
「下らなくたって一向に構わないですよ。あなたの考えてるかことがわかるなら」
「ひぃ」
「何ですか、ひぃってのは?」
「圧が極まって息がし辛い…」
「大丈夫ですよ。さっさとはいてしまえば楽になります」
「私は犯罪者じゃないぞ。カツ丼も嫌いだ」
「昭和の刑事ドラマムーブは嫌いじゃありませんよ、私は。太陽にほえろやらはぐれ刑事純情派やら」
「やっぱり熱苦しいなお前…。私はアンナチュラルかmiu404派…」
「野木亜紀子お好きですか」
「新しいシリーズ出るといいな…。坂本と中堂の仲は最高だ。刈谷さんと毛利さんも凄くいい…」
「…コメントし辛いとこ持ってきますね」
「桔梗さんもマコトも大好きだ。仕事にプライドを持って前を向ける女は格好良い。米津玄師の歌がまたいいしな。星野源を使いながら敢えて米津玄師…。凄くいい…。ラストマイルのがらくた聴くと涙が出て来る」
「続きは呑みながら聞きましょうか」
「…昭和の刑事ドラマも語る気だな?」
「勿論ですよ」
「ならお前にもコアラとパンダについて語って貰うぞ?」
「コアラとパンダ?」
「ふ。いいな。楽しくなってきた。買い物に行くか」
小枯は鬼鮫の顔を覗き込んでにっこり笑った。
鬼鮫がちょっと目を細めて、握り締めていた髪ごと小枯の頭を引き寄せた。
「いいでしょう。あなたがそうして欲しいならコアラでもパンダでも語りますよ。何とか、頑張って」
「あはは。何を頑張るつもりだよ?そんな難しいことじゃないから。ただ…」
ただ、思ったことを話してくれよ。それでいいんだ。
鬼鮫の胸に額を押し付け、小枯は目を閉じた。
弥栄