白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第29章 ○ 卒業間近のトラブル ●
2月下旬。星歌の両親が住むアメリカではテロが相次ぎ、ニュースや情報番組でもさまざまな報道が繰り返されている。幸いなことに両親は無事であるが、一時的に入出国の制限が厳しくなり、出国に関しては大幅に減便されると発表された。もしかすると、両親の来日が卒業式に間に合わないかもしれない…と、星歌は落ち込んでいる。それでもバイト中は気丈に振る舞い、その健気さに緒方は胸を痛めている。
そんな星歌を笑顔にさせようと、白川が画策した。
「ねえ、星歌ちゃん、最近は卒業式に彼氏から花束もらうのが流行ってるんでしょ?」
「…確かに、チラホラ聞きますね。すごく羨ましいって、みんな言ってます」
白川のメガネがキラリと光った…ように見えた。楽しそうに肘で緒方を小突いて言う。
「ほらほら、やっちゃいなよ、花束!」
「…その日は対局だ」
白川は「えー!」と、わざとらしく肩を落とすが、すぐに星歌の方を見て言葉を続ける。
「やっぱり、花束もらうと嬉しいでしょ?」
「…そうですね。花束って特別な贈りものって感じですもんね」
「ほら!星歌ちゃん、花束ほしいってよ!卒業式後のデートで大きな花束渡しちゃいなよ!」
「…まァ、星歌が喜ぶなら…」
緒方は小さく呟いてから、コーヒーを1口飲んだ。例によってその耳は赤い。
「卒業式、楽しみだね。緒方がたくさんお祝いしてくれるよ。卒業祝いに、欲しいものもたくさんリクエストしちゃいなね」
「はい、ありがとうございます、白川先生」
カフェを出ると白川が言う。
「星歌ちゃん、無理してるよな。緒方、お前がちゃんと支えてやれよ」
「ああ」
「一時期お前ら不穏だったから心配したんだぞ?もう大丈夫なんだろうな?」
「ああ、大丈夫だ」
「それなら、よかった」
安心したような白川を見て、緒方もホッとする。そして星歌のことを思い、オレがしっかりしなきゃな…と気持ちを引き締めていた。