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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第35章 ○ 未来へと続く、あたたかな春 ●


 棋院では、毎年恒例の表彰式が行われている。緒方も表彰者の1人だ。式典後、ホールは和やかなパーティ会場へと変わり、スーツ姿の棋士たち、華やかなドレスの女流棋士たちや家族であふれる。 
 星歌は一柳家に伝わる振袖を着て、少し緊張した面持ちで立っている。緒方は、遠くからその姿を見つけた瞬間に胸が熱くなった。…とても、きれいだ。長い袂が揺れ、帯の金糸がきらめく。普段の姿とは違うが、確かに星歌のままの、大人の女性の美しさ。
 白川が、肘で小突いてきた。
「おいおい、婚約だって?ラブラブすぎるだろ〜」
「…うるさい」
恥ずかしさを隠すように答えたが、口元はゆるみっぱなしだった。
「幸せそうで何よりだよ、星歌ちゃん、緒方をよろしくね」
「ありがとうございます、白川先生」
 星歌は恥ずかしそうに、小さく頭を下げた。
2人で会場の片隅にいると、カフェの常連棋士たちが次々と声をかけてくる。
「星歌ちゃん、きれいになったな!」
「緒方くんと星歌ちゃん、お似合いだよ」
 星歌は顔を赤くしながらも、丁寧にお辞儀を繰り返した。そのたびに、緒方の胸はあたたかくなっていく。婚約、同棲…。夢見た星歌との未来が、現実になる。星歌と毎日一緒に朝を迎えて、一緒に食事をして、仕事や学校では別々の時間を過ごしても、帰る家は同じ。そして、夜は2人で眠りにつく。対局で負けても、星歌が待っていてくれる。タイトルを獲れば、星歌が笑ってくれる。そんな未来が目の前に、確かに広がっている。オレは、やれる。もっと強くなって、もっと大きな舞台に立って、星歌をずっと幸せにできる男になる。
 緒方は、そっと星歌の手を取る。星歌は驚いたように顔を上げるが、すぐに、優しく握り返す。
「…精次さん?」
「星歌…」
 緒方は喧騒の中で、星歌だけに聞こえる声で言う。
「これからも、ずっと、そばにいてくれ」
「うん。ずっと、一緒に」
 2人の指が絡まりあった。ホールの照明が2人を優しく照らす。あたたかな春に、2人の新しい人生が今、確かに始まろうとしていた。
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