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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第28章 ● 一歩踏み出すバレンタインデー ○


 2月14日、バレンタインデー。インターホンが鳴った瞬間、緒方の心臓が跳ね上がった。モニターに映る星歌は、紙袋を胸に抱えて小さく俯いている。
 オートロックを解除してドアを開けると、星歌がコートにマフラー姿で現れた。
「…入る、か?」
 緒方が小さな声で聞くと、星歌はコクリと頷いた。靴を脱いで上がる足取りは少しぎこちない。
 星歌はコートを脱ぎ、マフラーとハンドウォーマーも外してソファにちょこんと座る。緒方は紅茶を淹れてから、星歌と少し距離をとるよう斜め前のスツールに座った。
 数秒間の沈黙が続く。
「…ガトーショコラ、作ったんだ」
 星歌はテーブルの上に、ラッピングされた小さな箱を置く。
「ありがとう」
 蓋を開けると甘い香りが広がった。
 星歌はもう1つの包みを差しだす。
「…マフラー、編んだの…」
 黒に近い濃紺。首に巻きやすそうな短めのサイズだが、勉強やバイトで忙しい中、編んでくれたというのか…。緒方は両手で受け取ってから、慈しむようにマフラーを撫でる。
「大変だっただろ?」
「…受験が終わってから、少しずつ編んでたの…」
 星歌は俯いたまま、指をモジモジさせている。
「…そんなに時間をかけてくれたのか…」
 胸がいっぱいになり、声が震える。さっそく首に巻いてみると、あつらえたようにぴったりだった。星歌のぬくもりが伝わってくるようにあたたかい。
「…ありがとう。本当に…ありがとう、星歌」
 星歌は小さく頷く。
「…ガトーショコラは、明日美に手伝ってもらったの…。おいしいレシピなんだって」 
 緒方はフォークを用意して、1口食べる。甘すぎず、しっとりとなめらかな食感。
「確かに美味いな」
「…よかった…」
「星歌も食べるか?」
 星歌がホッとしたような笑顔を見せたので、緒方は聞いてみる。
「家に少し残ってるから…それは、精次さんに食べてほしい」
 今度は、目を見て笑ってくれた。緒方の心臓はドキリと高鳴った。
 星歌との間に、こんなにあたたかな空気が流れるのは、ずいぶんと久しぶりのように思う。オレたち、前みたいに戻れるよな…。星歌の笑顔により、緒方は希望を抱いていた。
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