第8章 初めての寮生活
部屋の中は、必要最低限の荷物しかなく、どこか殺風景だった。
二人はベッドと、椅子に少し距離を置いて座る。
「……驚いたよ、雄英に編入してくるなんて。神野で姿を見たときは、頭が真っ白になったんだ」
「……ごめんね、心配かけて。私、あの時、ヴィランに……」
はそこまで言って、言葉を詰まらせた。
爆豪に借りた大きなTシャツの袖を、ギュッと握りしめる。緑谷はその様子を見て、無理に聞き出すのをやめた。
「話したくないことは、言わなくていい。……ただ、これだけは言わせて。……また会えて、本当に嬉しいんだ」
「……っ、出久くん……」
「中学の時、僕……何もできなかった。君がいなくなった時も、探すことしかできなくて。……でも、今はヒーローを目指してる。君が苦しいなら、今度こそ力になりたいんだ」
緑谷の真っ直ぐな、一点の曇りもない瞳。
その眩しさに、は胸の奥がチクリと痛んだ。
「……出久くんは、優しいね。昔から、あたしが泣いてるといつも飛んできてくれた」
「……だって、大事な幼馴染だもん。かっちゃんは乱暴だけどさ、……かっちゃんなりに必死に君のこと、守ろうとしてる」
「……うん、分かってる。勝己くんがいてくれなかったら、あたし……今頃、どうなってたか」
ふと、二人の間に穏やかな時間が流れる。
中学時代、放課後の教室で他愛もない話をしていたあの頃のような、懐かしく切ない時間。
「……ねぇ、出久くん。あたし……ちゃんと、みんなと一緒にやっていけるかな。……汚れちゃった、こんな身体で……」
「……汚れてなんてないよ。君が今ここにいること、それが全てだよ。……僕も、クラスのみんなも、君の味方だ」
部屋の空気は、緑谷の言葉によって静かに、そして温かく満たされていた。
その「光」があまりに眩しくて、は今まで誰にもさらけ出せなかった「絶望」を、この優しい幼馴染になら託せるかもしれないと思った。
「……出久くん。……全部、話してもいいかな。私が、あの一ヶ月……そして、この前の神野の事件で何をされていたか」
緑谷は息を呑み、正座し直すと、真っ直ぐに彼女を見つめた。
「……うん。聞くよ、全部」