第8章 初めての寮生活
「勝己くん……。……いいのかな。……こんな、……汚れた私なのに……」
「……あァ?」
爆豪は荷物を床に置くと、赤みの引かない顔のままの隣に座り、その頭をガシガシと乱暴に、けれど温かく撫でた。
「……ババァの言う通りだ。……テメェは一生、俺の目の届くところにいろ。……余計なこと考えんな、ボケが」
「……うん、……っ。ありがとう、勝己くん……っ」
爆豪の不器用な言葉は、何よりも強く彼女の心を繋ぎ止めていた。
光己の提案に、満更でもなさそうな顔を隠しきれない爆豪。
その背中を見つめながら、は寮生活への不安の中に、小さな、確かな希望を見出していた。
雄英高校、共同寮「ハイツアライアンス」
新しい生活への期待に胸を膨らませるA組の生徒たちが次々と入寮し、リビングに集まっていた。
外では入寮前に相澤から厳しい指導があったようだが、その熱気も中へ入れば、まだ見ぬ「新生活」への高揚感に上書きされている。
一方、その喧騒から離れ、爆豪の隣の部屋で静かに荷解きをしていたのもとに、相澤から下に降りてくるようにメッセージが届いた。
階段を降りるの足取りは重かった。
大きなパーカーのフードを深く被り、爆豪から借りた「匂い」の強い上着で、自分の身体から漂うあの甘い香りを必死に隠している。
リビングに降り立つと、そこにはクラスメイト全員の視線が集まっていた。
「……皆、静かにしろ。今日からこの寮で共に過ごす編入生を紹介する」
相澤の言葉に、場が静まり返る。
が恐る恐るフードを外すと、その場にどよめきが走った。
「うおっ! 超絶美少女じゃん!!」
「え、ええ!? こんな時期に編入生!? しかも……ええっ!?」
上鳴や瀬呂がテンションを上げる中、神野の現場にいた切島、飯田、八百万、そして轟の四人は、その顔を見て息を呑んだ。
「……君、は……あの時の……」
切島が絞り出すように呟く。
彼らの記憶にある彼女は、白濁に汚れ、絶望の淵で泣き崩れていた姿。
それが、雄英の制服に身を包んでいることに、言葉にならない衝撃を受けていた。
「……あ、……えっと……っ」
が俯き、震える手で服の裾を掴む。
その時、人混みの後ろから、震える声が上がった。
「……、ちゃん……?」