第6章 新しい日常
放課後の校門前、爆豪は壁に背を預け、腕を組んで立っていた。
鋭い目つきで周囲を威圧しているが、その視線はひっきりなしに校舎の出口へと向いている。
「……おせぇぞ。どんだけ待たせりゃ気が済むんだテメェは」
「勝己くん! ……待っててくれたんだね。ありがとう」
駆け寄るの顔に、今朝よりもずっと明るい色が差しているのを見て、爆豪は鼻を鳴らして視線を逸らした。
「チッ、不審者がうろついてたら寝覚めが悪ぃからな。……帰んぞ」
爆豪家での生活も、数週間が経つ頃にはすっかり日常へと溶け込んでいた。
夕暮れのキッチンでは、が光己と並んで野菜を刻む音が心地よく響いている。
「ちゃん、本当に筋がいいわね!」
「ふふ、光己さんの教え方が上手いんですよ。……私、この時間が一番好きかも」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない! 」
本当の母娘のように笑い合う二人。
リビングのソファからその様子を眺めていた爆豪は、雑誌に目を落としながらも、口元が緩むのを必死で抑えていた。
夜、が身体が疼くと爆豪の部屋のドアを叩く頻度は、少しずつ、けれど確実に減っていった。
最初は毎晩のように泣きつき、爆豪の熱で中を塗り潰さなければ眠れなかった彼女だったが、光己の愛情深い料理と、爆豪が注ぎ続ける愛情が、ヴィランに書き換えられた彼女の細胞を少しずつ浄化していったのだ。
ある夜、爆豪の部屋を訪れたは、いつものように縋るのではなく、そっと爆豪の隣に座った。
「……勝己くん。今日はね、一人でも眠れそうな気がするの」
「…………。そうか」
爆豪は少しだけ寂しそうな、けれどそれ以上に誇らしげな表情で彼女の頭を乱暴に撫でた。
「無理すんな。……辛くなったら、いつでも来ればいい。……俺が、お前の居場所なんだからよ」
「……うん。おやすみなさい、勝己くん」
彼女の額に、慈しむような口付けを一つ。
その夜、は一ヶ月ぶりに、爆豪の腕の中でも、ましてや男たちの幻影に怯えることもなく、自分の部屋で穏やかな眠りについた。
書き換えられたはずの身体は、爆豪という「本物の愛」によって、再び彼女自身のものへと取り戻されつつあった。