第5章 『極上ミルク』の正体
窓の外が白み始め、鳥の声が微かに聞こえる早朝。
爆豪は重い瞼をこじ開け、腕の中で安らかに眠るを見つめた。
昨夜の激しい情事の名残で、彼女の肌には赤みが差し、部屋にはまだ甘いミルクの香りが漂っている。
「……ん、……勝己、くん……」
微かに目を覚ました彼女の額に、爆豪は不器用な、けれどこの上なく優しい口付けを落とした。
「……寝てろ。今日が実習の最終日だ。……終わったら、すぐに迎えに来る」
「……実習……。そっか、勝己くんは、ヒーローだもんね……」
は、シーツから覗く爆豪の逞しい背中を見つめた。
彼がいなくなれば、またあの地下室の静寂が、男たちの手が襲ってくるのではないか。
そんな予感に、彼女の細い指が爆豪の服の裾を微かに掴む。
「……怖がるな。ここには誰も入れさせねぇ。……ジーパンも外で見張ってやがる」
爆豪は彼女の指をそっと解き、もう一度だけその手を強く握りしめた。
「……待ってろ。次に来る時は、退院の手続きだ。……俺の家に来い」
「……っ、…うん。待ってる。待ってるね、勝己くん」
爆豪は一度も振り返ることなく、鋭い足取りで部屋を出て行った。
その背中には、彼女を傷つけた世界をすべて叩き潰さんとするような、峻烈な覚悟が宿っていた。
バタン、と静かにドアが閉まる。
「…………」
一人残された病室で、は爆豪が触れていた場所をそっと撫でた。
ナカにはまだ彼の熱が残っているが、彼が去った後の空間はあまりにも広くて冷たかった。
彼女は、爆豪が残した匂いを探るように身を縮め、寂しさを堪えるように、朝の光の中で瞳を閉じた。