第11章 毒ある慈愛の飼育
「……否定はしない。俺は、しくじった」
相澤は低く、掠れた声で認めた。
その潔すぎる敗北宣言に、爆豪は一瞬毒気を抜かれたように眉を寄せた。
「認めるなら話は早ぇ。今すぐアイツを返せ」
「それはできない。彼女の欲求はもはや、誰か一人が抱えて済むレベルじゃない。……だが、俺が管理し続けるのも、教育者としての限界だ」
相澤は深く息を吐き、机の上で指を組んだ。
「爆豪。条件付きで、お前たちとの接触を許可する。ただし、俺の管理下だ」
「あぁ? 管理だの何だの、まだそんな寝言……」
「聞け。放課後、決められた時間のみ。回数の制限を設け、事後の状況報告を義務付ける。そして何より、彼女自身の意思を最優先とする。……これ以上は、一歩も譲らん」
相澤の瞳に、わずかながらプロとしての峻烈な光が戻った。
爆豪は舌打ちを隠そうともせず、相澤を睨みつける。
「ハッ、報告だぁ? んなもん、一回一回『中出ししました』って報告しろってか? 悪趣味なんだよ、先生」
「嫌ならこの話は白紙だ。彼女は俺が責任を持って隔離する。お前がどんなに騒ごうが、公的な手続きを踏んで、お前たちが二度と触れられない場所へな」
「……っ、……テメェ……!」
爆豪は拳を握りしめ、プルプルと震わせた。
相澤の言葉は脅しではない。
今の相澤には、その権限も、そして実行するだけの力もある。
沈黙が指導室を支配した。
爆豪は何度か激しく呼吸を繰り返し、やがて吐き捨てるように言った。
「……わかったよ、クソが。その条件で飲んでやる。……だがな、テメェが抱くより、俺が抱く方がよっぽどあいつはイケる。……それを思い知らせてやるから覚悟しとけ」
「……勝手にしろ。ただし、ルールを破れば即刻中止だ」
相澤はそう答えたものの、心の中では冷めた諦念が渦巻いていた。
爆豪が彼女を抱けば、また彼女の「ミルク」は濃くなり、男を狂わせる香りは強まる。
救うための妥協か、あるいは、地獄を分かち合うための言い訳か。
相澤にはもう、その区別すらつかなくなっていた。