第10章 欲しがる者と与えるモノ
相澤の詰め寄るような問いに、心操は答えに詰まった。
彼女が寂しさに疼いていたとき、救うふりをしてその甘い香りに溺れたのだ。
「……答える必要、ありますか」
「……心操」
相澤は重いため息をつき、教え子の肩に手を置いた。
「深入りしすぎるな。……その顔、今の爆豪との差は、単なる『個性』の摂取量だけの問題じゃなさそうだな」
心操は無言で相澤の手を振り払い、夜の帳が下り始めた校舎へと背を向けた。
夕闇が校舎を飲み込み、寮の談話室でA組が文化祭の練習をしている頃、相澤は重い足取りでの部屋の前に立ち、ドアを短くノックした。
「……先生? どうしたんですか、こんな時間に」
現れたは、心なしか以前より肌に艶が増し、その瞳は潤んでどこか焦点が定まっていない。
部屋から漂い出すのは、甘いミルクの香りと、それを上書きしようとする爆豪の荒々しい匂いだ。
「少し話をしよう。……入るぞ」
相澤は彼女を促して入室すると、逃げ場を塞ぐように椅子に座った。
「エリちゃんの件で手を取られ、お前のフォローが後回しになっていた。……今の心操の様子と、今の爆豪の異常なコンディション。……何が起きているか、包み隠さず話せ」
相澤の射抜くような視線に、はビクリと肩を揺らした。
だが、嘘はつけないと悟ったのか、彼女は震える声でぽつりぽつりと独白を始めた。
「……治崎から救い出されてから……、ずっと、変なんです。身体の芯が、ずっと熱くて……疼いて……」
「治崎……あの時の、後遺症だな…」
相澤は眉間に深く皺を寄せた。
「最初は、……寂しくて、怖くて。……何人かの男の子に、一日に何度も抱いてもらってました。そうしないと、壊れちゃいそうで。……でも、今は……」
「今は、爆豪か」
「はい。……勝己くんが、朝も、昼も、夜も……何度も。……わたしのミルクを飲んで、……何度も、ナカに入れて、……掻き回して……。……でも、それでも足りないんです」