第10章 欲しがる者と与えるモノ
「……だって、この方が汚れないし、合理的でしょ? ……それに私、今までも散々……飲んでて、慣れてるから、大丈夫だよ」
「……慣れてる、って……」
心操の胸に鋭い痛みが走る。
爆豪や先輩たち、そしてあのヴィランに、どれほどこうして「処理」をさせられてきたのか。
その事実に複雑な思いが込み上げるが、それ以上に彼女が自分の種を躊躇なく受け入れたという事実に、歪な喜びが勝ってしまう。
「……お前、本当に……救えねぇな」
「ふふ、心操くんが救ってくれてるじゃない」
は手際よく身なりを整え、唇に残った微かな熱を舌でなぞった。
その仕草すら今の心操には極上の毒に見えた。
「……行くぞ。午後の授業、遅れたら怪しまれる」
心操は無理やり冷静さを装い乱れた呼吸を整えた。
廊下へ出ればまた「ただのクラスメイト」だ。
けれど、自分のナカは空っぽになり、代わりに彼女の胃の腑には、今しがた放った自分の熱が確かに収まっている。
「……心操くん、またね」
「……ああ。……またな…」
二人は甘い余韻を引きずりながら、日常という名の舞台へと戻っていった。
廊下ですれ違う生徒たちは、心操の瞳に宿る「執着の火」に気づくことはなかったーー。