第10章 欲しがる者と与えるモノ
登校してC組の教室に入ると、昨日よりもさらに友人たちが心配そうに駆け寄ってきた。
「ちゃん! 本当に大丈夫? 昨日もすぐ早退しちゃったし……」
「病み上がりなんだから、あんまり無理しちゃダメだよ。辛かったらすぐ先生に言ってね?」
「……うん、ごめんね。もうだいぶ落ち着いたから、大丈夫。ありがとう」
友人たちの純粋な言葉を笑顔で受け流しながら、はふと視線を感じて顔を上げた。
教室の入り口付近に心操が立っていた。
昨夜彼から届いたその後の心配のメールには「大丈夫」と返してあるが、彼は鋭い眼差しでじっとこちらを観察していた。
「……おい」
「心操くん……。メール、見たよ。心配してくれてありがとう」
「……顔色は悪くねぇな。だが、お前のことだ。無理して笑ってんじゃねぇのか」
心操の声は低く、周囲には聞こえないほど密やかだった。
彼は一歩踏み込み、の首筋の隠しきれない紅い痕をチラリと見て、不機嫌そうに目を細めた。
「……今は、大丈夫。今朝、勝己くんに……しっかり鎮めてもらったから」
「……そうかよ」
心操は自嘲気味に笑いポケットに手を突っ込んだ。
「……だが、あいつ一人じゃお前の『全部』は抱えきれねぇだろ。……また、どうしようもなくなったら、いつでも呼べ」
「……心操くん……」
「……勘違いすんな。ただの『救済』だ」
心操はそれだけ言い残し、背を向けて去っていった。
昼休みを告げるチャイムが鳴る頃、NAME1#は襲ってきた熱に机を掴んで耐えた。
今朝、爆豪に優しく抱かれたばかりなのに。
治崎に狂わされたこの身体は、一度「火」がつくと自分でも制御できない速度で男の熱を欲し始めてしまう。
(勝己くんのところに行かなきゃ……っ)
荒い息を吐きながら廊下のへ向かった彼女を鋭い視線が捉えていた。
「……やっぱりな。朝の『余裕』はどこに行ったんだよ」
背後から声をかけたのは心操だった。
彼は周囲に人がいないことを確認すると、の震える肩を支えるように引き寄せる。
「心操、くん……っ。……ごめん、なさい。今から、勝己くんのところへ……」
「……悪いけど、今は俺が限界なんだわ」
「え……?」