第10章 欲しがる者と与えるモノ
「勝己くんにも抱いてもらったけど、……昼間も、クラスの男の子にお願いして、………そうしないと、私、今日を越せなかったから……」
淡々と、けれど絶望を孕んだ告白。
緑谷と轟は雷に打たれたように固まった。
疼きを鎮めるために、男にまで縋らなければならないという残酷な現実。
「……僕たちが、……助けたはずなのに……」
緑谷の声が震える。
救い出したはずの彼女は今もなお、見えない檻の中で蹂躙され続けている。
「……。お前がそんなに苦しんでいるのに、俺たちは……。……何か、力になれないのか」
轟の瞳に静かな、けれど暗く燃えるような光が宿る。
それは彼女を憐れむ心と、自分たちもその痛みを分かち合いたいという歪んだ救済だったり
「……ねぇ、二人とも。……そんな悲しい顔しないで? 私は……生きてるから」
が力なく微笑む。
その瞬間、緑谷は彼女の手を強く握りしめた。
「……ちゃん。……次は、僕を呼んで。……他の男の人じゃなくて、僕に……その疼きを、止めさせてほしいんだ」
「……ありがとう。そう言ってもらえると、少しだけ安心する」
は、緑谷の熱い手の上に自分の手を重ねて微笑んだ。
不特定多数の男に縋る恐怖は、常に彼女の心を削り続けていた。
けれど、気心の知れた、以前から深い関係にあった二人なら話は別だ。
彼らの熱さを知っているからこそ、その「救済」を受け入れることに抵抗はなかった。
「僕たちに、遠慮なんてしないで。……ちゃんが一人で知らない誰かに縋らなきゃいけないなんて、そんなの、僕は耐えられないから」
緑谷の瞳にはヒーローとしての使命感と、一人の男としての独占欲が混ざり合っている。
「……ああ。爆豪がいない時は、俺たちが側にいる。他所のどこの馬の骨かも分からない奴に、お前を触らせたくない」
轟も静かだが断固とした口調で付け加えた。
その眼差しは彼女の首に残る爆豪の痕を、今すぐにでも自分の温度で上書きしたいと言わんばかりだった。