第10章 欲しがる者と与えるモノ
「……わりぃ……朝からやりすぎた」
爆豪は不器用な手つきで汗で張り付いた彼女の髪をそっと避けた。
その瞳には先程までの凶暴さはなく、申し訳なさと愛おしさが滲んでいる。
「……勝己、くん……」
「……喋んな。……ほら、立てるか。いつまでもそんなツラしてっと、また……したくなんだろうが」
爆豪は彼女を抱き上げバスルームへと運んだ。
乱暴に身体を拭いてやりながらも、その手つきはどこか優しい。
「……今日からまた学校だ。………他の野郎に余計な隙見せんじゃねぇぞ。…いいな?」
「……うん……っ」
爆豪は彼女の額に唇を落とした。
自分だけの匂いで、自分だけの痕跡で塗り潰した彼女。
その身体に袖を通させ登校の準備を急がせるのだった。
久しぶりの雄英の校舎。
C組の教室に足を踏み入れると、クラスメイトたちが一斉にを取り囲んだ。
「ちゃん! 大丈夫だったの? ずっと体調不良だって聞いてたから心配したよ!」
「顔色、まだ少し赤いんじゃない? 無理しちゃダメだよ」
友人たちの純粋な善意が痛いほど突き刺さる。
本当の事なんて言えなかった。
「……うん、ごめんね。もう大丈夫。ちょっと、長引いちゃって……」
曖昧な笑顔で誤魔化しながら午前中の授業を終えたが、昼休みになると身体の奥がズキズキと疼き始めた。
治崎に植え付けられた飢えが容赦なく彼女を蝕む。
「ちゃん、お昼一緒に食べよう?」
「ごめん!……ちょっと、用事があるの。また今度ね!」
誘いを振り切り逃げるように教室を飛び出した。
向かう先はA組の教室。
けれど、そこには爆豪も、緑谷や轟の姿もなかった。
(……みんな、いない、どうしよう。……ナカ、あつくて、変になりそう……っ)
廊下の壁に手をつき荒い息を吐く。
そんな彼女の背中に、低く落ち着いた声がかけられた。
「……おい、大丈夫か。顔が真っ赤だぞ」