第10章 欲しがる者と与えるモノ
「俺がおらん間に、もしまた身体が辛くなったり、寂しくなったりしたら大変やろ? せやから、信頼できる助っ人を呼んであるんや」
「助っ人……ですか?」
「おう! ちょうど別の病棟で『暇で死にそうや!』言うて暴れとる元気な男がおるんよ。……おーい、入ってええぞ!」
ファットガムの声に応えるように、勢いよくドアが開いた。
「失礼するよ! パワー!!」
現れたのは、個性を失った直後とは思えないほど、眩いばかりの笑顔を浮かべた通形ミリオだった。
「ミリオさん……!」
「やあちゃん! 事件の時はゆっくり話せなかったけど、改めて自己紹介させておくれ! 雄英高校3年、通形ミリオだ。よろしくね!」
ミリオは病室に入るなり、シュパッと指を立てて爽やかなポーズを決める。
そのあまりの光量の強さに、は思わずパチパチと瞬きをした。
「ファットから話は聞いてるよ。君の『リハビリ』のサポートメンバーに、僕も立候補させてもらったんだ! 身体の調子はどうだい? どこか『桃』が流れてきそうな気分かな?」
「も、桃……? ええと、桃太郎の話ですか……?」
「ははは! どんぶらこっこ、ってね! 冗談だよ! でも、君が笑ってくれて良かった。笑っていれば、大抵の悲しみはどっかへ飛んでいっちゃうからね!」
ミリオの屈託のないユーモアと、底抜けに明るいエネルギー。
それは、治崎の地下室で凍りついていたの心を、驚くほど簡単に解きほぐしていった。
「……ふふっ。ミリオさんって、本当に面白い方なんですね」
「ミリオなら安心や。こいつは個性がなかろうが、心は誰よりもヒーローやからな」
ファットガムが目を細めて笑う。
は、頼りがいのある大きな背中のファットガムと、太陽のように明るいミリオを見比べ、心からの安堵を感じていた。
「ありがとうございます。お二人とも……。私、頑張ります。ちゃんと、リハビリ」
「その意気だ! 辛い時は僕が全力でギャグを飛ばすし、ファットが全力でお腹を貸してくれるからね!」
賑やかになった病室で、の頬にはようやく、年相応の赤みが戻り始めていた。