第10章 欲しがる者と与えるモノ
深夜の雄英高校、生徒寮『ハイライツ』
事情聴取やらで深夜に戻った緑谷達を待っていたのは、ニュースで事件を知り、不安な顔をしたクラスメイトたちの顔だった。
「お前ら!無事だったか!?」
詰め寄る仲間たちに、緑谷は疲れ切った顔で、けれど精一杯の誠実さを込めて頭を下げた。
「みんな、心配かけてごめん。……僕は大丈夫だよ。でも、詳しいことはまだ話せないんだ……プロの方からも口止めされていて。本当にごめん」
なんとかクラスメイトたちをなだめ、自室へ戻るふりをして、緑谷は視線で爆豪と轟を促した。
三人は無言のまま、人気のない非常階段の踊り場まで移動する。
「……おい、デク。てめぇ、何を知ってやがる。あいつはどこだ」
爆豪が低い声で詰め寄る。
轟もまた、静かながらも圧のある眼差しを緑谷に向けた。
「緑谷、隠さなくていい。……はどうなった」
緑谷は二人を見据え、震える声を抑えて口を開いた。
「……見つけたんだ。死穢八斎會の本拠地で……今は救出されて病院に搬送されてるよ」
「っ……! 無事なんだな!?」
「病院か……。場所を教えろ、今すぐ行くぞ」
轟が踵を返そうとしたが、緑谷がそれを強い言葉で制した。
「待って、轟くん! 行っちゃダメだ!」
「……あァ? 何でだよ。見つけたんならさっさとツラ拝みに行かせろや!」
爆豪の掌から火花が散る。
しかし、緑谷の表情は暗く沈んでいた。
「相澤先生から、厳しく言われてるんだ……。病院へ行くことは、ヒーローとしても生徒としても、禁止だって……もし命令を破れば、即刻除籍も辞さないって、それくらい強い口調だった」
「除籍だと……?」
轟が足を止める。
「事情が事情なんだ。警察とヒーローが厳重に管理していて、今は完全な面会謝絶。……僕も、相澤先生の計らいで少し会えただけなんだけど……」
緑谷は、病室の光景を思い出し、唇を噛んだ。
「……今の彼女は、僕たちが知ってるちゃんじゃないんだ。心も身体も、あの治崎に……グチャグチャにされて……。デリケートな状態なんだよ。今僕たちが行っても、彼女をさらに追い詰めるだけだ……って」
「…… クソが……あいつに何しやがった、あのクソヴィラン……ッ!!」
爆豪が壁を殴りつけ、轟は拳を握りしめた。