第8章 初めての寮生活
翌朝、1-Aの寮はいつも以上に騒がしかった。
中心にいるのは、頬に派手な絆創膏を貼った爆豪と緑谷。
そして、彼らに下された「謹慎」の処分は、瞬く間にクラスメイトたちの格好の餌食となっていた。
「いやー、仮免当日に殴り合いで謹慎って……おまえら元気すぎんだろ!」
上鳴やクラスメイトに冷やかされ、緑谷は頬を掻きながら力なく笑った。
「……あはは、本当に面目ないよ……。相澤先生、本気で怒ってたし……」
そんな中、登校の準備を終えたがおずおずと二人に近づいた。
彼女の足取りは、昨夜の轟による「慰め」のせいでどこか頼りなく、微かに熱を帯びている。
「……勝己くん、出久くん。……大丈夫? 怪我、痛くない?」
心配そうに潤んだ瞳で見つめる彼女に、緑谷は表情を和らげた。
「大丈夫だよ、ちゃん。心配かけてごめんね。今日は一日、寮の掃除をして反省してるから」
「……うん。お掃除、頑張ってね」
「あァ!? 誰が頑張るかよ、クソが!」
隣で不機嫌を絵に描いたような顔で掃除用具を握っていた爆豪が、地を這うような声で割り込んだ。
との距離を詰める。
「っ……か、勝己くん……?」
爆豪は彼女の耳元に顔を寄せ、鼻先が触れるほどの距離で深く匂いを嗅いだ。
「……てめぇ、昨夜どこにいた」
「えっ……それは……」
「言わなくていい。半分野郎の匂いがこびり付いてやがる……今は我慢してやるよ」
爆豪の瞳が、獲物を狙う獣のように細められた。
「その代わり、放課後だ。……帰ってきたら、昨夜の分まで泣かせてやる。朝まで寝かさねぇから覚悟しとけ。いいな?」
「っ……、あ……」
あからさまな「抱き潰す」という宣言。
が言葉を失って顔を真っ赤に染めると、爆豪はそれだけ言い残し、苛立ちをぶつけるように掃除に戻る。
「……ちゃん? 顔、真っ赤だよ? 」
緑谷が心配そうに覗き込んでくるが、爆豪の言葉が頭から離れない彼女は、小さく首を振るのが精一杯だった。
「な、なんでもないの……! 私、学校……行ってくるね!」
逃げるように寮を飛び出した。
秋の涼しい風に当たっても、爆豪に囁かれた言葉と、昨夜の轟の感触が混ざり合い、彼女の身体は登校中もずっと、熱い疼きを抱えたままだった。