第8章 初めての寮生活
ようやく彼がその欲望を解き放ったとき、の意識は真っ白な闇へと沈みかけていた。
「……あ、……ぁ……」
焦点の合わない瞳で虚空を見つめる彼女を、轟は愛おしそうに、そして征服感に満ちた表情で抱きしめる。
「……悪かったな。……でも、少しだけ楽になった」
その言葉を最後に、の意識は完全に途切れた。
彼女の白い肌には、轟の執着が鮮やかな赤紫の痕となって、無数に散らばっていた。
轟の部屋でがその身を散らしている頃、グラウンドβではもう一つの「爆発」が起きていた。
緑谷の前を行く爆豪の背中からは、隠しきれない殺気が溢れ出している。
「……てめぇの『個性』、俺に勝って手に入れたもんじゃねぇだろ」
爆豪が足を止め、振り返る。
その瞳には、仮免試験に落ちた屈辱以上に、長く澱んでいた激情が宿っていた。
「オールマイトから貰って、なんで……なんでてめぇなんだよ! なんで俺じゃねぇんだ!!」
「かっちゃん……」
「あいつだってそうだ! 俺が、俺が一番強くなって、あいつを誰の手も届かねぇ場所に囲っておくはずだった……! なのに、なんでてめぇはいつも俺の先にいやがるんだよ!!」
爆豪の手のひらで、爆炎が轟いた。
「来いよ、デク! 全力で来い!!」
「……わかったよ。君がそこまで言うなら、僕も手は抜かない!」
二人の衝突は、単なる喧嘩ではなかった。
憧れ、嫉妬、そしてという唯一無二の存在を独占したいという狂おしいほどの執着。
それらすべてを拳に込めて、二人はぶつかり合った。
「てめぇの『守る』なんて、生ぬりぃんだよ! 俺はあいつを、俺の力で、俺の色だけで塗り潰してぇんだ!!」
「……僕だって、譲るつもりはないよ! 彼女を独り占めさせない!!」
激しい衝撃波が周囲を削り、互いの身体が傷ついていく。
だが、その限界を打ち破ったのは、闇夜に現れた「平和の象徴」だった。
「……そこまでだ、二人とも」
「! オールマイト……」
現れたオールマイトは、二人の間に割って入り、静かに説いた。
勝って救うこと、救って勝つこと。
そして、お互いを認め合うことの難しさを。
「……チッ」
爆豪は顔を背け、拳を下ろした。