第8章 初めての寮生活
仮免試験という大きな節目は、三人のヒーローとの間に、奇妙な明暗を落とした。
朝の喧騒の中、爆豪は出発の間際までを組み敷き、その肌に自身の所有印を刻みつけるように深く抱いた。
「応援してるね」と震える声で告げた彼女に対し、彼は不遜な笑みを浮かべて言い放った。
「当たり前だ、誰に口利いてんだ。俺が落ちるわけねぇだろ。大人しく待ってろ」
しかし、寮のリビングで彼らの帰りを待っていたの前に現れたのは、重苦しい沈黙だった。
「……嘘、二人が、落ちた……?」
の問いに、緑谷が申し訳なさそうな顔をして俯いた。
その横で、爆豪は今にも爆発しそうな形相で、誰の言葉も拒絶するように階段を駆け上がっていった。
「……悪い。俺たちが不甲斐ないばかりに、心配させたな」
そう口にしたのは、轟だった。
いつもの冷静な表情ではあったが、その瞳の奥には隠しきれない落胆と、自分自身への苛立ちが滲んでいる。
「轟くん……」
「……少し、頭を冷やしてくる」
背中を向けて自室へ向かう轟の後ろ姿は、爆豪の怒りとはまた違う、静かな痛みを纏っていた。
は胸が締め付けられるような思いで、そっと彼の後を追った。
ノックをして部屋に入ると、轟は腰掛け、掌を見つめていた。
「……か。爆豪のところへ行ってやらなくていいのか。あいつ、相当荒れてたぞ」
「……勝己くんは、今は一人にしておいた方がいいと思うの。それより、焦凍くん」
は静かに歩み寄り、彼の膝の間に身体を滑り込ませた。
上目遣いに彼を見つめると、轟の端正な顔がわずかに歪んだ。
「……慰めに来たのか」
「……私にできることなんて、これくらいしかないから」
彼女の手が、轟の頬にそっと触れる。
熱い左側と、冷たい右側。
そのどちらもが、今はひどく愛おしかった。
「焦凍くん、頑張ったんでしょ? 私は、焦凍くんがかっこいいって知ってるよ」
「……っ、よせ。……負け惜しみにしか聞こえねぇ」
轟は自嘲気味に笑おうとしたが、が彼のシャツのボタンに手をかけ、柔らかな胸元を押し付けると、その言葉は吐息に消えた。
「……今日は、私が焦凍くんを甘やかしてあげたいの。ダメ、かな?」
「…………」