第8章 初めての寮生活
ヒーロー科のA組とは少し離れた、普通科C組の教室。
「編入生」という珍しい存在、そして何よりのどこか儚げで、それでいて三人の男たちに慈しまれたことで開花した独特の艶っぽさは、すぐにクラスメイトたちの注目を集めた。
「ねぇねぇ、前はどこにいたの? もしかしてヒーロー科狙いだった?」
「好きな食べ物は? 趣味は? 髪の毛すっごい綺麗だね!」
休み時間になるたび、の机の周りには幾重にも人だかりができた。
大勢に囲まれることにまだ慣れていない彼女は、圧倒されて小さく肩を震わせた。
「あ、……えっと、……あの……っ」
言葉に詰まり、潤んだ瞳で俯く彼女の姿は、周囲の好奇心をさらに煽ってしまった。
「……おい。いい加減にしてやれよ。困ってるだろ」
その時、人だかりを割るようにして、低く気だるげな声が響いた。
現れたのは、逆立った紫色の髪と、深い隈が印象的な少年――心操人使だった。
「心操くん……」
「……質問攻めは、一種の拷問だ。彼女、泣きそうになってるぞ」
心操が少し冷ややかな視線を周囲に投げると、クラスメイトたちは「あ、悪い……」「ちょっと盛り上がりすぎたわ」と、バツが悪そうに散っていった。
静かになった教室で、心操は彼女の隣の席に座り、ふっと息を吐いた。
「……大丈夫か。お人好しそうだから、流されやすいんだろうな」
「あ……ありがとう、心操くん。……助かったよ。私、あんまり……こういうの慣れてなくて」
「見ればわかる。……編入生なんて珍しいし、みんな興味があるだけだ。嫌ならハッキリ言ったほうがいい」
心操の言葉は少しぶっきらぼうだったが、そこには爆豪の苛烈さや、緑谷の過保護、轟の執着とは違う、どこか対等で穏やかな優しさが混じっていた。
「……うん、そうだね。次は頑張ってみる。心操くんは……すごく、落ち着いてるんだね」
「……そうか? 俺はただ、体力を無駄に使いたくないだけ」
ふい、と顔を背けた心操だったが、その耳たぶがわずかに赤くなっているのをは見逃さなかった。
「ふふ、心操くん……本当は優しいんだね」
「……勝手に決めつけるなよ」
それからも席が隣な事もあり、話すことが多い二人は、少しずつ打ち解けていくのだった。