第8章 初めての寮生活
「……まだ、起きてたのか」
「っ……!!」
不意に背後から声をかけられ、は持っていたコップを落としそうになった。
振り返ると、そこには冷蔵庫へ向かおうとしていた轟焦凍が立っていた。
「……ぁ、……えっと、……轟、くん……」
神野のあの戦場にいた一人。
は、彼とまともに目を合わせることができず、着古したパーカーの襟元をギュッと掴んだ。
「…わりぃ、驚かせるつもりはなかったんだ。ただ、水でも飲もうと思って……」
轟はいつもの淡々とした調子で言ったが、彼の視線は、震えるの足元で止まった。
薬で身体を作り変えられてしまった彼女は、極度の緊張に晒されると肉体が反射的に「家畜」としての反応を始めてしまう。
「……っ、……ぁ、……ん……」
シャワーで流したはずの身体が、急速に熱を帯びる。
爆豪との激しい情事の余韻が残る胸の先端が、轟のどこか優しい瞳に見つめられただけで、ズキンと疼いた。
パーカーの胸元に、じわりと二つの小さな染みが広がっていく。
「……お前、顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」
「……ち、違うの、これは……っ」
轟が心配そうに一歩近づいた瞬間、リビングに濃厚で甘い、場違いなほど淫らなミルクの香りが立ち込めた。
轟の鼻腔が微かに動く。
「……この匂い、……バニラか……? いや、もっと濃厚な……。爆豪や緑谷から時々漂ってくる匂いと同じ……」
「……あ、……あ……っ」
核心を突かれ、はその場に座り込んでしまった。
轟は動揺することなく、彼女の隣に膝をつき、驚くほど静かな声で問いかけた。
「……爆豪が、必死に隠そうとしてるのは……このことなのか。何があったか、俺に話すのは嫌か」
「……轟くん……。私、……ヴィランに、……ミルクを出す機械みたいに、身体を作り替えられちゃったの。……緊張すると、勝手に出てきちゃって……止まらなくて……っ」
震える声で告白する彼女。
轟はその言葉を聞いても、蔑むような光を一切見せなかった。
彼はただ、彼女の肩にそっと手を置いた。