第2章 2
強風に惑うことなく鈴を揺らす姿は圧巻だった。試合を盛り上げようだとか、砂嵐で前が見えないとか、チャレンジャーによくいる焦りを見せることもない。ただ目の前の試合に真摯に向き合いワザを指示する。
「ホエルコ!<しおみず>!」
キバナは冗談だろう?と呆気に取られたのを覚えている。どうやってホエルコの体力を把握している?ホエルコだけじゃなくフライゴンの体力も把握しなければただのみずタイプの攻撃で終わる。
じめん、ドラゴンタイプの複合であるフライゴンにみずタイプのワザは等倍だ。しかしフライゴンの体力が削られている今なら<しおみず>の威力は二倍。
同時にみずのワザを使うことで周囲の砂嵐を緩和させた。もっとも砂が少なくなった瞬間、リネアの鈴が鳴ったのだ。
意図的にワザを指示し、尚且つ自身の環境を整地した上で次の手を考える。なんと美しい戦い方をするのか。
この強さは対峙しなければ分かるまい。リネアの戦い方はキバナの固定観念を鈍器で殴ったのだ。
チャレンジャーとの戦いも録画をし研究している。キバナはリネアと初めて戦った時の録画を再生していた。
リネアの戦い方はまるで、水面下に石を重ねているようだ。着実に戦いながら布石と思考を巡らせる一石を撒き、気づいた時には後手に回っている。長期戦になればなるほど不利になる。トーナメントとは違いジムバトルではそれなりに手加減をするのだがあの時は足元にまで迫る一石に鳥肌がたった。
ダンデとの戦いはヒリヒリして火傷しそうなほど熱い。チャンピオンとの戦いは鮮烈で瞼に光が残る。リネアとの戦いは芸術と言えるほど見事な采配に足が取られる。
一気に三人も目指すべき先がある。キバナはリネアとの戦いの後に、なんて恵まれているのだろうと感動さえしていた。
フライゴンが小さく喉を鳴らす。頭を撫でてながら録画を止めた。
「リネア、引き受けてくれねぇかなあ」
映像に残るリネアの笑顔は眩しい。