第1章 1
リネアは前回のチャレンジの参加者で最後のトーナメント戦にも残った優秀なトレーナーだ。しかし、目は限りなく暗闇に閉ざされている。ジムリーダーたちは察していたがそれ以外のトレーナー、観客、スポンサー、全員に「目が見えている」と今も思い込ませるほど完璧なバトルをする。そんなリネアに一目置いていたのだが一回戦で敗退。そもそも四体のポケモンであそこまで勝ち上がったことが驚異だ。
「ほい、どうだ?」
杖を握らせると振って鈴を鳴らす。そうしてようやく強張った表情が和らいだ。
「ありがとうございます。これで大丈夫です」
「にしても鈴とられるなんて運がなかったな」
「はい、ちょうど買い出しをしてポケモンたちをうちに置いていたので…キバナさんが来てくださって安心しました」
声だけで相手がわかるのはリネアにとって当たり前のことだろう。しかしキバナにとっては嬉しいことだった。
「もう日が暮れる。近くまで送るぜ」
「そんな、悪いです」
「女の子一人にさせてちゃオレさまの風評に関わるだろ?」
リネアはおどおどしながらも小さく頷いた。裾を握らせゆっくり歩く。リネアの歩幅は小さくてまるで一番安くて手頃な駄菓子のよう。
「キバナさんは何をされていたんですか?」
「オレさまはランニング。そろそろ切り上げようと思ってたら困ってる声聞こえて慌てて飛んできたぜ」
「すごいですキバナさん。見えないところでたくさんトレーニングをしていて」
年齢に不相応なくらいしっかりしている。リネアの年頃はもっとバトルして遊んで走り回って生意気だ。少なくともキバナはそうだった。
「そういえばリネアはチャレンジが終わって、今は何してるんだ?」
最終トーナメントに参加したチャレンジャーはそれぞれの道を見出している。ホップはポケモンの研究員に。マリィは次期ジムリーダーに。ビートも同じく。チャンピオンは言うまでもないだろう。
とにかく彼らの成長はキバナも楽しみで近況を聞くたびに笑顔が絶えない。しかしリネアはそうではないようだ。
「……実は、私は近々実家に帰る予定です」
「バトルはしないのか?」
「地元でしますが、公式戦には出ないかもしれません」
「えぇ!?もったいねえ!」