第5章 半冷半燃の少年は彼女を温めたい 【ヒロアカ 轟焦凍】
事後、轟は彼女の身体を優しく拭い、予備の清潔な服を着せると、眠る彼女の額に一度だけ口付けた。
個室を出て、廊下で待っていた相澤に報告を入れる。
「……終わったか。彼女の様子は」
「……眠ってます。毒の影響はもうないはずです」
「そうか。……なら、お前は今すぐ寮に帰れ。あとは女性スタッフが対応する」
相澤の事務的な指示に、轟の眉がぴくりと動いた。
「……嫌です。あいつが起きるまで、俺が傍にいます。……あいつ、起きた時に誰もいないと、また不安になるかもしれない」
「轟。お前がやったことは、あくまで『救助』だ。だが、許可のない外泊は認められん。ましてや、今の状況でお前を同じ部屋に居させ続けるほど、俺は能天気じゃない」
相澤の鋭い視線に、轟は拳を握りしめて食い下がる。
「ですが、俺が……!」
「帰れ。これは教師としての命令だ。……明日、彼女が戻ってくるまで、自分を律しておけ」
轟は不承不承、寮へと戻る羽目になった。
その夜、腕に残る彼女の重みと匂いを思い出し、一睡もできないまま朝を迎えた。
翌日の午後、寮の玄関が開くと、そこには少し照れくさそうに、けれど昨日までの憑き物が落ちたような「すっきり」とした顔のいのりが立っていた。
「……ただいま戻りました」
「いのりちゃん!! 大丈夫だった!? 具合は!?」
「心配したんだからね! あの後、轟ちゃんも顔色変えて帰ってきて……」
駆け寄る女子たちに囲まれ、いのりは頬を赤らめながら頷く。
「はい。……皆さん、ご心配をおかけしました。もう、大丈夫です」
そこへ、廊下の奥から足早に轟が現れた。
一晩離れていただけで、彼の渇望は限界だったらしい。
周りの目も気にせず、彼はいのりの前に立つと、その肩を抱き寄せた。
「……戻ったか」
「あ、焦凍さん……。昨日は、その……ありがとうございました」
「いや。……お前が元気なら、それでいい」
「おーおー! 轟、顔がニヤけてんぞ!」
「あんなに激しく『救助』したのに、まだ足りないって顔してるわね、ケロ」
クラスメイトたちの容赦ない揶揄いに、いのりは顔から火が出るほど赤くなった。
「な、何を言って……っ!」
「……悪いが、こいつと話がある。……行くぞ」
轟は揶揄う連中を完全に無視し、いのりの手を引いて歩き出した。
