第2章 現代最強は彼女を手放さない 【呪術廻戦 五条悟】
「お、真希。それに……見慣れない子だね。君が噂の『禪院から逃げてきた子』?」
軽薄な、けれど抗いようのない威圧感を纏った声。
見上げると、そこには目隠しをした長身の男が立っていました。
「——五条、悟……」
いのりが息を呑むと、真希が面倒くさそうに顔をしかめた。
「ああ、悟か。無視していいぞ、いのり。性格は最悪だからな」
「ひどいな真希! 僕はこんなに教育熱心な教師なのに」
五条はひらひらと手を振ると、腰をかがめていのりの顔を覗き込んできた。
目隠し越しでも、すべてを見透かされているような感覚。
いのりは思わず身を縮めた。
「禪院の連中が、よく君を手放したね。腐ったミカン箱みたいな場所なのに」
「……手放しては、くれませんでした。……死ぬ気で、逃げてきたんです」
絞り出すようないのりの言葉に、五条の口角がわずかに上がる。
「へぇ。……いいね、それ。君、呪力も術式も大したことないけど、その『目』はいい。屈しなかった目だ」
五条は大きな手をいのりの頭にポン、と置いた。
「安心していいよ。ここは僕の学び舎だ。禪院のクソったれな伝統も、僕が遮ってあげる。……その代わり、しっかり働きなよ? 」
「……っ、はい……! ありがとうございます、五条先生!」
真希が「チッ、調子のいいこと言って」と舌打ちする横で、いのりは初めて、直哉の呪縛から本当に解放されたような気がして、涙を堪えるように強く拳を握りしめた。