第2章 現代最強は彼女を手放さない 【呪術廻戦 五条悟】
禪院の「枷」を振り切り、這うようにしてたどり着いた東京。
呪術高専の冷たいコンクリートの壁は、いのりにとっては何よりも温かい自由の象徴だった。
呪霊に追い回され、痣だらけになる毎日。
それでも、あの日々のように「胎」として、直哉に尊厳を削られる苦痛に比べれば、今の痛みは生きている証そのものだったら
ある日の午後、いのりは訓練場の隅で真希と並んで座っていた。
「……また派手にやられたな、いのり。受け身が甘いんだよ」
真希が差し出してきたドリンクを受け取り、いのりは苦笑いを浮かべた。
「あはは……真希ちゃんみたいに強くはなれないよ。でも、楽しいの。自分で選んで、ここにいるって感じられるから」
「ふん、おめでたい奴。まあ、あの地獄みたいな本家にいるよりはマシか」
真希のぶっきらぼうな言葉に、いのりは心の底から頷く。
あの当主の息子——直哉の、冷酷で傲慢な瞳。
逃げようとした夜、組み伏せられて刻まれた、消えない指の痕。
思い出すだけで呼吸が浅くなるけれど、今は隣に真希がいる。
その時、長い影が二人を覆った。