禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第4章 爆殺神の彼は彼女を拾う 【ヒロアカ 爆豪勝己】
爆豪は、潮風に揺れる彼女の髪を眺めながら、ノンアルコールのワインを煽る。
「……食い終わったら、下の砂浜まで行くぞ。……波打ち際で、その重てぇ殻を全部流してこい」
「……っ、うん! 楽しみ!」
自由の味は、少しだけ潮の香りがした。
リストランテを後にした二人は、白砂が眩しい海岸へと降り立った。
遮るもののない太陽の光が、砂粒の一つ一つを宝石のように輝かせている。
「……っ、爆豪くん、見て! 水が、透き通ってる……!」
いのりは、行儀よく揃えていた靴とストッキングを脱ぎ捨て、裸足で波打ち際へと駆け出した。
京都の古い屋敷や、あの薄暗い施設では決して許されなかった、奔放なまでの無邪気さ。
足裏を撫でる濡れた砂の感触と、冷たい海水が足首を叩くたび、彼女の口からは鈴を転がすような笑い声が溢れる。
「お、おい! あんま深く行くんじゃねぇぞ、波にさらわれんぞ!」
少し離れた乾いた砂の上で、爆豪は彼女の靴を両手に持ち、ぶっきらぼうに声を張り上げた。
だが、その言葉とは裏腹に、彼の視線は釘付けになっていた。
陽光を浴びてキラキラと舞う水飛沫。
その向こうで、スカートの裾を少し持ち上げ、波と楽しそうに戯れる彼女。
今ここにいるのは、ただ海に喜び、風に髪をなびかせる、一人の生きた少女だった。
「爆豪くん、こっちに来て! ほら、冷たくて気持ちいいよ!」
いのりが振り返り、大きく手を振る。
その屈託のない笑顔があまりに眩しくて、爆豪は思わず目を細めた。
「……チッ。ガキかよ、テメーは」
毒づきながらも、爆豪の口元は自然と緩んでいた。
ただ愛おしいものを眺める、柔らかくて、どこまでも優しい笑顔。
(……ああ。そうだ、これだ)
爆豪は、波に洗われる彼女の白い足先を見つめながら、心の中で静かに確信した。
自分がその掌に宿す爆炎は、敵を倒すためだけにあるのではない。
彼女がこうして、何の怯えもなく笑っていられる「平穏」を守るためにこそ、自分は最強でなければならないのだ。
「おい、いのり! びしょ濡れになる前に戻ってこい!……アイス、食わせてやるからよ」
「……っ! うん!」
再び駆け寄ってくる彼女の体温を、爆豪はその胸に受け止める準備をしていた。
寄せ返る波が、彼女の過去の涙をすべて浚い去っていくように。
