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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー

第4章 爆殺神の彼は彼女を拾う  【ヒロアカ 爆豪勝己】


「……おい。いつまで見惚れてんだ、さっさと降りるぞ」

不機嫌そうに、けれどどこか気遣うような爆豪の声が、レンタカーの運転席から飛んできた。

ヒーロー業に忙殺される彼が、この日のために手配した車。
いのりは助手席でシートベルトを握りしめたまま、フロントガラス越しに広がる景色に、ただ息を呑んでいた。
かつて京都の格式高い家柄に縛られ、直哉という男の「所有物」として暗い部屋に閉じ込められていた彼女。
京都の海も知ってはいたが、それはいつも高い壁や伝統、そして誰かの監視の目に遮られた、狭くて冷たいものだった。

「……爆豪くん、すごい。本当に、太平洋の海は端っこがないんだね……」

彼女が爆豪に「どこかへ行きたい場所はあるか」と問われ、絞り出したリクエスト。
それは、どこまでも続く、遮るもののない水平線を見ることだった。
そこに行けば、自分を縛り付けるすべての鎖から解き放たれ、本当の意味で「自由」になれる気がしたから。

「……フン。んなもん、これから嫌ってほど見せてやるよ」

爆豪は乱暴にエンジンを切り、車を降りた。
彼が選んだのは、断崖の絶壁に建つ、海を一望できるイタリアン・リストランテだった。

「……わぁ、綺麗……」

テラス席に案内されると、目の前には遮るもののないコバルトブルーの絶景が広がった。
日頃、爆豪のために栄養バランスの取れた和食を丁寧に作っている彼女にとって、彩り豊かなイタリアンの色彩は、新しい世界の象徴のように映る。

「毎日毎日、煮物だの和食だの、テメーは手ェ込みすぎなんだよ。たまにはこういう、横文字の飯でも食っとけ」

「ふふ、ありがとう。爆豪くん、私のこと考えて選んでくれたんだね」

運ばれてきたのは、地元の魚介を贅沢に使った料理の数々。

「……美味しい。……爆豪くん、このパスタ、海の味がするよ」

「当たり前だ、獲れたてなんだからよ。……ほら、それも食え。お前、家じゃ俺にばっか良いとこ食わせて自分は控えめだろーが。今日は遠慮すんな」

爆豪は自分の分のアクアパッツァの身を器用に解すと、一番脂の乗った部分を彼女の皿へ放り込んだ。

「……爆豪くんの優しさは、いつもあったかいね」

フォークを動かしながら、いのりが心から笑う。
その笑顔には、一人の人間として新しい味を知り、生を謳歌する無垢な輝きが宿っていた。

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