第4章 爆殺神は彼女を拾う 【ヒロアカ 爆豪勝己】
夕食の献立を考えながら、スーパーからの帰り道を歩く。彼女の足取りは軽かった。
そんなささやかな幸せは、爆豪が危惧していた通り、唐突に、そしてあまりにも無残に打ち砕かれた。
轟音と共に路地裏の壁が弾け、逃走中のヴィランがいのりを組み伏せたのは、一瞬の出来事だった。
「動くんじゃねえ! ヒーローども! 近づいたらこいつの首をへし折るぞ!」
駆けつけた警察と、そして爆音と共に着地した爆豪の視界に入ったのは、刃物を喉元に突きつけられたいのりの姿だった。
「……いのりっ」
爆豪の瞳が、見たこともないほど冷たく、鋭い殺意に染まる。
周囲の空気が彼の怒りに同調するように、パチパチと焦げ付くような音を立てた。
「おい、その汚ねぇ手をどけろ。今すぐだ」
だが、追い詰められたヴィランは下卑た笑いを浮かべ、人質である彼女の恐怖をあおるように、彼女の柔らかな胸を服の上から乱暴に掴み、揉みしだいた。
「いい体してんなぁ、おい! ヒーロー様に助けてほしいか? あァん?」
「っ、いや……やめて……っ、離して……!」
さらに、男は逃げようと悶える彼女の頬から首筋にかけて、ねっとりと舌を這わせた。
「っ……!!」
直哉に蹂躙されていた記憶が、フラッシュバックする。
男たちの欲望に晒され、モノとして扱われる屈辱。
いのりの瞳から、せき止めていた涙が溢れ出した。
「爆豪くん……っ、助けて、たすけて……っ!!」
その悲鳴が、爆豪の理性を完全に焼き切った。
「……お前、今、何をした?」
爆豪の足元のアスファルトが、プレッシャーでひび割れる。
彼はもう、ただのヒーローの顔をしていなかった。
大切な女を汚され、踏みにじられた一人の男としての、凄まじい「憤怒」が爆発する。
「その女が、どれだけの地獄をくぐり抜けて、ようやく笑えるようになったと思ってやがる……」
爆豪の掌が、太陽のような眩い光を放つ。
「俺の目の前で……俺の女に指一本でも触れたこと、あの世で後悔しやがれ!!」
ヴィランが反応する間もなかった。
精密にコントロールされた爆破が、いのりを傷つけることなく、男の腕だけをピンポイントで弾き飛ばす。
「ぎゃああああああっ!!」
男が悶絶し、彼女を離した瞬間。
爆豪は爆速で間を詰め、宙に浮いた彼女の身体を左腕で抱き寄せた。
