第4章 爆殺神の彼は彼女を拾う 【ヒロアカ 爆豪勝己】
コンクリートの冷たさと、排気ガスの匂い。
禪院家の古い畳の匂いとは違う、見知らぬ街の夜に、いのりは唐突に放り出された。
手首を縛る縄は食い込んだまま、引き千切られた制服からは、直哉に執拗に汚された肌が剥き出しになっている。
内腿を伝い落ちる白濁した熱が、彼女が受けてきた蹂躙の凄惨さを物語っていた。
「……ぁ、……っ」
声も出せない。
意識の混濁した彼女の視界に、鋭い足音が近づいてくる。
「あァ? ……おい、なんだぁ、これ……」
パトロール中だった爆豪勝己は、路地裏に転がる「異様な塊」に足を止めた。
最初はヴィランの死体かと思った。
だが、近づいて目に入ったのは、縄で縛り上げられ、陵辱の痕跡を全身に刻まれた、自分と同年代か、それよりも幼い女の姿だった。
「クソが……ッ!」
爆豪の脳裏に、怒りが瞬時に沸騰する。
荒い呼吸、焦点の合わない瞳、そして隠しようもない精液の臭い。
ヒーロー志望の彼でなくとも、これが「普通の事件」でないことは一目で分かった。
「おい! しっかりしろ! 誰にやられた、ヴィランか!?」
周囲を鋭く警戒し、掌に小さな火花を散らしながら、爆豪はいのりの傍らに膝をついた。
敵が近くに潜んでいる可能性を考慮し、爆破の準備を整えつつも、その眼差しには隠しきれない動揺が走る。
「……たす、けて……」
いのりの掠れた声に、爆豪はチッと舌打ちをした。
それは彼女への苛立ちではなく、こんな惨い真似をした「誰か」への、そして目の前の弱々しい命への、彼なりの不器用な焦燥だった。
「わーってるよ……。おい、動くんじゃねぇぞ」
爆豪は自分のヒーローコスチューム、ベストの下に着込んでいた予備の布や、近くに落ちていた彼女の制服の残骸をかき集め、剥き出しの肢体を覆い隠した。
縛られた縄を爆破で切るわけにもいかず、彼はそのまま、折れてしまいそうな彼女の身体を横抱きにする。
「……ん、ぁっ……こわ、い……」
「怖くねェ! 俺が来たからには、もう誰も指一本触れさせねェよ。……寝てろ、クソカス」
直哉の腕は、いつも暴力と支配の熱を帯びていた。
けれど、今自分を抱き上げているこの少年の腕は、ひどく熱いのに、どこか清潔な怒りに満ちていて、決して自分を壊そうとはしない。