第4章 爆殺神の彼は彼女を拾う 【ヒロアカ 爆豪勝己】
その瞬間、部屋の空気が微かに震えた。
絶望の底で彼女が流した最後の一雫が、床に落ちる。
不思議な感覚だった。
縄が肌を噛む痛みも、身体の芯に居座る不快な熱も、急激に遠のいていく。
まるで、世界そのものが彼女を切り離そうとしているかのように。
「あ……」
視界が白く、淡い光に包まれる。
いのりの身体は、床に沈み込むようにして透け始めた。
直哉が執着し、蹂躙し続けたその肢体は、もはやこの世界の理に留まることを拒んでいた。
最後に彼女の脳裏に浮かんだのは、皮肉にも直哉の嘲笑ではなく、一度も見たことのない、どこまでも高く青い自由な空だった。
朝の「教育」のために部屋を訪れた直哉が見たのは、主を失った無残な制服の残骸だった。
そこに、いのりの姿はどこにもなかった。
「落ちこぼれ」の少女は、執着という名の呪縛を振り解き、祈りとも願いともつかぬ奇跡によって、この残酷な世界から永遠に姿を消したのだったーー。