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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】

第3章 影を操る彼は彼女を隠したい 【呪術廻戦 伏黒恵】


補助監督の新田明が運転する車は、八十八橋のある埼玉県へと向かって走行していた。
後部座席では、虎杖と野薔薇の二人に左右から挟まれる形で、いのりが文字通り「すし詰め」状態になっている。

「ねえ、実はちょっと前から気になってたんだけどさ」

野薔薇がぐいっと身を乗り出し、いのりの肩に腕を回す。

「アンタたち、交流会の前から思ってたけど、あの『空気感』は何? いつから付き合ってんのよ!」
「えっ!? つ、付き合って……ないよっ!」
「そうだよ、釘崎。新田さんもびっくりしてハンドル操作誤っちゃうだろ?」

虎杖がニヤニヤしながら援護射撃を飛ばすと、運転席の新田が「えっ、付き合ってるんスか!? 若いっスねぇ!」とバックミラー越しに目を輝かせた。
助手席に座る伏黒は、深くため息をつきながら窓の外を見つめている。

「……新田さん、運転に集中してください。虎杖、釘崎。お前らもうるさい、任務前だぞ」
「はいはい、出たわよ学級委員長。本当はいのりが隣じゃなくて寂しいんでしょ?」
「釘崎、いい加減に……」

伏黒の声が一段低くなる。

「…恵くん。私、大丈夫だよ。こうやってみんなでいられるの、本当に嬉しいから」

いのりが左右の二人を見、それから助手席の伏黒の頭を後ろから見つめて微笑んだ。
虎杖が死んだと思い、伏黒と二人で必死に耐えていたあの夜。
あの孤独を知っているからこそ、この騒々しさが愛おしくてたまらない。

「……付き合ってない」

伏黒が静かに、けれど毅然と言い放つ。

「あ、そうなの? 意外。伏黒の片想いか?」
「……うるさい。俺がこいつを大切にしてるのは事実だ。文句あるか」
「ッ!!」

いのりの心臓が、本日最大級の音を立てた。
助手席の伏黒は相変わらず不機嫌そうな顔をしてるが、時よりバックミラー越しに彼女と見つめ合っていた。

「ちょっと!二人でテレパシー送ってんじゃないわよ!」
「男前だな、伏黒!」
「……新田さん、こいつら外に放り出してください」
「無理っスよ伏黒くん! 仲良く行くっス!」

車内には笑い声が響く。
これから向かう先にあるのは、伏黒の過去と向き合う過酷な戦場。
けれど、首筋に残る宿儺の熱と、伏黒から伝わる静かな熱。
その両方を抱きしめて、いのりは深く座席に背を預けた。
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