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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】

第3章 影を操る彼は彼女を隠したい 【呪術廻戦 伏黒恵】


「……まだ、いける。まだ……っ!」

高専の敷地内で、いのりはボロボロになるまで一人特訓していた。
弱ければ、また誰かを失う。
宿儺に付けられた首筋の噛み跡が、熱を持ったようにズキズキと疼く。

「……そこまでにしろ」

背後から伸びてきた大きな手が、彼女の手首を優しく、けれど拒めない強さで掴んだ。
振り返ると、そこには伏黒が立っていた。
彼もまた、虎杖を失った痛みをその瞳の奥に沈めている。 

「恵くん……。でも、私、もっと強くならないと……」
「わかってる。だが、お前が壊れたら、俺は誰と一緒にあいつの席を守ればいいんだ」

伏黒は一歩踏み込むと、震えるいのりを包み込むように抱き寄せた。
彼の心音と、少しだけ荒い吐息が耳元に届く。

「……焦るな。お前は、俺が守る。お前が強くなるまで、何度でも俺が支えてやるから」

その不器用で、ひどく甘い誓いに、いのりは彼の胸に顔を埋めて声を殺して泣いた。


そして迎えた、京都校との交流試合。
死んだはずの虎杖悠仁が、馬鹿げたサプライズと共に目の前に現れた時、世界に色が戻った気がした。

「っ、…虎杖くん…!!」

駆け寄ったいのりは、周りの目も気にせず虎杖の胸に飛び込んだ。
生きてる、その事実に、堪えていた涙が溢れて止まらない。

「うわっ、いのり! 泣くなって、元気だったか?」
「バカ……!ずっと待ってたんだから……っ!」

泣きじゃくる彼女の姿を、少し離れた場所から見ていた伏黒の唇から、ようやく長い溜息が漏れた。

(……やっと、笑ったな)

これまで一度も心からの笑顔を見せなかった彼女。
虎杖の生存に心底安堵し、泣き笑う彼女の横顔を見つめながら、伏黒は自分でも気づかないほど柔らかな表情を浮かべていた。

「おい、いつまで抱き合ってんだ。試合が始まるぞ」

ぶっきらぼうに二人の間に割って入った伏黒だったが、その手はさりげなくいのりの腰に添えられ、彼女を自分の方へと引き寄せる。
伏黒は指先で彼女の涙をそっと拭うと、耳元でだけ聞こえる小さな声で囁いた。

「……これからは四人だ。お前の笑顔を、もう絶やさせない」

その言葉は、初夏の風に乗って、甘く、けれど誰にも壊せない契約のようにいのりの胸に深く刻まれた。
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