第2章 現代最強は彼女を手放さない 【呪術廻戦 五条悟】
「——伊地知、硝子。頼みがある」
五条に呼び出された二人は、その尋常ならざる気迫に、思わず背筋を伸ばした。
「いのりが禪院家にいた頃の生活、洗い出して。特に直哉との接触履歴。あそこの隠蔽工作なんて、僕の権限で全部ぶち抜いていいから」
「五条、落ち着け。……あの子の体に不自然な痕があったのは、私も気づいてはいたが」
硝子が煙草を燻らせながら、眉根を寄せた。
「不自然な痕? 詳しく教えてよ、硝子」
「……古い痣や、拘束されたような跡だ。術師の修行でつくものじゃない。それに、婦人科系の疾患を疑うような出血の形跡もあった。……あの子、相当な地獄にいたはずだ」
その言葉を聞いた瞬間、五条の周囲の空気が「ミリッ」と音を立てて歪んだ。
隣にいた伊地知が、あまりの呪圧に膝をつく。
「五条さん、落ち着いてください! 窓を使って、すぐに禪院家の使用人や出入りの業者から証言を集めます。……一日、いえ、半日ください」
「……三時間でやって」
五条は感情の消えた声で言った。
「僕が手塩にかけて、ようやく笑えるようにした女の子だよ? それを、あんなゴミ屑みたいな男が汚していたなんて、冗談でも許されないんだよね」
三時間後、伊地知が持ってきた報告書には、目を覆いたくなるような事実が並んでいた。
「当主の嫡男による、日常的な夜這い」「胎としての強要」「外部との接触を絶たれた軟禁状態」
報告書を読み終えた五条は、ふっと笑った。
「……あは。面白いね。僕の大切なものにあれだけ舐めた口を叩きに来たわけだ」
「五条……。どうするつもりだ?」
硝子の問いに、五条は答えなかった。
ただ、目隠しを付け直すその口角が、かつてないほどに吊り上がっていた。
「伊地知、午後の予定全部キャンセル。……ちょっと、京都までゴミ拾いに行ってくる」
「えっ、五条さん!? 今からですか!?」
「当たり前でしょ。僕のいのりを壊した奴が、のうのうと息をしてるなんて、世界が間違ってるんだから。……徹底的に、分からせてあげないと」