第2章 現代最強は彼女を手放さない 【呪術廻戦 五条悟】
五条の奢りで来た高級焼肉店の個室は、肉の焼ける芳醇な香りと、生徒たちの喧騒で満たされていた。
「よしよし、焼けた!はい、いのり。一番いい部位だよ!」
五条は網の上で完璧に焼き上げたシャトーブリアンを、当然のような顔でいのりの小皿に乗せた。
「あ、ありがとうございます……でも先生、私ばかりこんなに……」
「いいの。いのりはもっと脂肪と幸せを蓄えるべき。ほら、冷めないうちに食べなよ」
五条のトングは、休むことなくいのりのためだけに動いていた。
その徹底した「贔屓」っぷりに、向かいの席に座る真希は、高級なタンを噛み締めながら盛大に溜め息をついた。
「おい悟。さっきからいのりの皿にしか肉が動いてねぇぞ。私らの前にはカボチャとピーマンしかねぇんだけど」
「しゃけ! おかか!」
狗巻も自分の空の皿を叩いて抗議した。
パンダに至っては、五条が隠し持っていた希少部位の皿を横から奪い取ろうとしていた。
「贅沢言わないの。君たちは自分で焼く逞しさを持ってるでしょ? いのりは僕が甘やかさないと死んじゃう病気なんだよ」
「どんな病気だよ! 気持ち悪いこと言うな」
真希の罵倒も、今の五条には心地よいBGMでしかなかった。
五条は再びいのりの方を向き、今度はサンチュで巻いた肉を彼女の口元へ運んだ。
「はい、いのり。あーん」
「せ、先生……! みんな見てるから、本当に恥ずかしい……」
「えー、誰も見てないよ。みんな肉に夢中だよ」
「ガン見してんだよ!!」
生徒全員のツッコミが揃ったが、五条はどこ吹く風だった。
「……五条先生…意地悪です」
「はは、最高の褒め言葉。もっと意地悪されたいなら、この後のデザートは僕の部屋で二人きりで食べようか」
五条はそう言って、いのりの頬についたタレを親指でそっと拭い、そのまま自分の指を舐めた。
そのあまりに露骨で独占欲に満ちた仕草に、いのりはもう、肉の味さえ分からなくなるほど頭が真っ白だった。
「……おいパンダ。あの目隠し、後で絶対に野晒しにするぞ」
「賛成だ。あんなの見せつけられて、胃もたれしてきただった」
生徒たちの冷ややかな視線を浴びながらも、五条は幸せそうに微笑むいのりを満足げに見つめ続け、夜は更けていくのだった。