第5章 その一瞬を切りとる君 【ハイキュー!! 宮侑】
「……自分、何しとんねん」
侑が呆れた声を上げた。
ミニステージが終わると🌸はロッカーの前で、あんなに大切に抱えていたカメラを、丁寧にロッカーへとしまっていた。
手元に残ったのは、スマホと、胸元につけた薄汚れたクマのゾンビぬいぐるみバッジだけ。
「え、カメラええんか? さっきまであんなに張り切ってたのに」
「うん。リアルタイムの書き込みチェックしたら、今日はウチの『最推し』のシフト入ってないみたいやし。それに……」
🌸は身軽になった体を一度大きく伸ばすと、四人に向かって屈託のない笑顔を向けた。
「今日はみんながおるしな! せっかくやから、カメラなしで全力で遊ぶことにした。たまにはレンズ越しやない景色も楽しまんとな!」
「……自分、たまにはええこと言うやんけ」
侑は少しだけ鼻を高くして、満足げに鼻を鳴らした。
自分たちとの時間を優先してくれたことが、柄にもなく嬉しかった。
「ほな行こか! 今年のゾンビ、設定がめちゃくちゃ凝ってんねん。あそこのエリアは人形のゾンビのエリアなんだけど、その元の人形が何体かパークに実際にあるんよ!特に人気なのは日◯人形ちゃん!」
「……あだ名までつけとんのかい」
「ゾンビにストーリーとか、設定盛りすぎやろ」
治と角名が引き気味にツッコむが、🌸はお構いなしにゾンビたちの間へ分け入っていく。
「あ、見て! あそこに三体おるやろ?あの子たち姉妹なんよ!あっちには、迷子の◯レーちゃんもおる!」
「うわっ、ほんまや……。って、こっち見んな! 怖いねん!」
銀島がゾンビに威嚇されて飛び退く中、🌸は「こんばんはー、今日もお疲れ様です!」と、まるで近所の住人に挨拶するかのようなノリでゾンビと絡んでいく。
「侑くん、見ててや。あのチェンソーのゾンビにこのクマ見せると、たまに特別な反応してくれるんよ……ほら!」
🌸が胸元のクマのぬいぐるみバッジを指差すと、徘徊していたゾンビがピタリと止まりお辞儀をした。
「……すごっ。自分、ほんまにこの世界の住人やな」
「せやろ? 撮るのも楽しいけど、こうやって世界観に混ざるんも最高なんよ。……ほら侑くん、ボーッとしてんと! あっちに面白いゾンビおるから、一緒に行くで!」