第5章 その一瞬を切りとる君 【ハイキュー!! 宮侑】
「……なぁ、急に空気変わったやん。めっちゃ不気味やねんけど」
侑が首をすくめ、周囲を警戒するように見渡した。
パーク内の華やかなライトアップがふっと消え、代わりに血のような赤と毒々しい紫の照明が街を染める。
スピーカーから不気味なBGMが流れ出すと、闇の中からボロボロの服を纏ったゾンビたちが這い出てくる。
「うわっ、出た! ……あいつ、こっち見とるやんけ!」
「銀、目ぇ合わせんな。絡まれるぞ」
治が冷静を装いながらも銀島の背中に隠れる一方で、角名はスマホを構えつつ「クオリティ高すぎ」と呟いている。
そんな四人をよそに、🌸は迷いのない手つきで機材を交換していた。
「……自分、レンズ替えたんか?」
侑が呆れ顔で覗き込む。彼女のカメラには、いつの間にか違うレンズが装着されていた。
「当たり前やん、夜は光が足りんからね。この明るい単焦点レンズじゃないと、ゾンビの速い動きは止められへんのよ。……よし、設定完了。あ、もうすぐ時間や。こっち来て!」
🌸は時計をチラリと確認するなり、迷いなく四人を誘導してミニステージの見える特等席へと陣取った。
「ここ、ダンスがきれいに見えるポジなんよ。しっかり見ときや!」
やがて、爆音のEDMが鳴り響くと同時に、数体のゾンビがステージに飛び乗った。
それまでの引きずるような足取りとは打って変わり、彼らは重力を無視したようなキレのあるダンスを踊りだす。
「……え、待て。あいつら、めちゃくちゃ動くやん」
侑は思わず息を呑んだ。
ゾンビたちの関節を外したような独特の動き、指先まで神経の通った鋭いポージング。
それは「死体」の不気味さを保ちつつも、圧倒的な美しさを持った「表現」だった。
周囲のゲストも、悲鳴を上げるのを忘れて見入ったり、一緒に狂ったように踊ったりして盛り上がっている。
「……かっこええなぁ」
🌸はファインダーを覗きながら、恍惚とした表情でシャッターを切り続けていた。
侑は真剣な眼差しで、ステージ上の「怪物」たちの動きを脳内に刻み込んでいた。
おどろおどろしいはずの光景が、今はただ、純粋に「かっこいいもの」として胸に響く。
赤く染まった夜空の下、狂騒の音楽に包まれながら、侑は隣で笑う少女の「本気」に、改めて惹かれていくのを感じていた。
