第5章 その一瞬を切りとる君 【ハイキュー!! 宮侑】
「……行かへんのか? 自分から話しかけに行けばええやん」
「ダメだよ。今は『指名待ち』の時間やもん」
「シメイ……? ホストか何かか?」
「ちゃうよ! キャラクターが、誰と一緒に撮るか選んでくれるんよ。だから、私はここで『私はあなたのファンですよ、準備万端ですよ』っていうオーラを出して待つの!」
侑には理解不能な世界だった。
待っている間、🌸は近くにいた家族連れが自撮りに苦戦しているのを見ると、「撮りましょうか?」と爽やかに声をかけ、プロ並みの構図でシャッターを切ってあげていた。
「はい、チーズ!……うん、お姉ちゃん可愛い! 良い思い出にしてね!」
その家族が去った直後。
それを見ていたキャラクターが、🌸を指さし、「おいで」と手招きをした。
「……っ! 来た! 侑くん、ちょい待っててな!」
🌸の顔が、今日一番の輝きを見せる。
駆け寄る彼女の背中は、まるで憧れの舞台に上がる主役のようだった。
「……なんやねん、それ」
侑は呆れながらも、目が離せなかった。
自分があのコートで見せる執着や熱量と、彼女がこのパークで見せるそれは、驚くほど似通っていたからだ。
「……指名、おめでとうさん」
ポツリと溢した独り言は、音楽にかき消されたが、侑の口元には微かな笑みが浮かんでいた。
「……自分、ほんまに楽しそうやな」
戻ってきた🌸は、カメラのモニターを確認しながら、これ以上ないほど満足げな顔をしていた。
「最高……! 今日の目線、完璧に決まったわ……」
悦に浸る彼女を横目に、ふと視線を感じて前を見ると、先ほどのキャラクターがまだこちらをじっと見ていた。
そして、🌸と侑を交互に指さし、両手の人差し指をくっつけて「ヒソヒソ」とするような仕草を見せる。
「……? なんや、あの動き」
「あはは! 違う! 『彼氏さん?』やって」
「はぁ!?」
「『ただの同級生!』って言うたんやけど、せっかくやから三人で撮ろうやて。ほら、侑くんこっち!」
強引に引っ張られ、侑はキャラと🌸の間に挟まれると、横にいた女性が自然にカメラを受け取った。
「あ、お願いしまーす!」
「オッケー、任せとき。……はい、ポーズ!」