第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……クロ。それ、彼女が可愛いとかのレベル超えてない?」
研磨が珍しくスマホを置き、真顔で言った。
「……完全に、そっち側の住人(ガチ勢)だよ。クロ、これからデート代よりチケット代(年パス)で家計が圧迫されるね」
「俺がプレゼントしようとしたら『年パスだからいらない』って秒で断られたわ……」
黒尾が力なく笑うと、部室にいた全員が、一歩後ろに引いた。
「……主将、どんまいっす。……相手は『夢の国』そのものだったんすね……」
「リエーフ、お前はもう喋るな。……黒尾、お前……これからは『彼女とのデート』じゃなくて、『彼女の遠征(撮影)』に帯同するマネージャーみたいな生活になるんじゃねーか?」
夜久の鋭すぎる指摘に、黒尾は天を仰いだ。
「……マネージャーでも何でもやってやるよ。……あいつの『特別フォルダ』、俺でいっぱいにするっつー契約、もう交わしちまったからな」
「うわ、やっぱり今の発言、激寒っす!」
強敵すぎる彼女の趣味に、音駒の主将はこれからも「レシーブ」し続ける覚悟を決めていた。
「……いや、だからさ。昨日のスターのファンサ、マジで神だったわけ。俺が『合格したよ』って言ったら、真っ先にハグしてくれてさ」
音駒のOBとなった黒尾は、いつものように研磨の家で、スマホの画面を見せながら熱弁を振るっていた。
画面に映っているのは、某有名ネズミのスターと、満面の笑みで肩を組む黒尾のツーショットだ。
「……クロ、それ。数ヶ月前の自分が聞いたら、即座にブロックするレベルで浮かれてるよ」
研磨がコントローラーを動かしながら、心底呆れたように呟く。
そう、黒尾は無事(?)に年パスデビューを果たしていた。
今や、彼女の「遠征」という名の撮影行脚に帯同し、巨大な望遠レンズを抱える彼女の横で、ドリンクを差し出したり場所取りを死守したりする、敏腕マネージャー兼彼氏としての地位を確立している。
「いいんだよ。あいつら……カメラオタクの連中、話してみると意外と面白くてさ。設定がどうとか、ライティングがどうとか、バレーの戦術分析に近いもんがあるんだわ」
「……完全に感化されてる。オタク仲間に『クロさん』って呼ばれて馴染んでるの、怖すぎるんだけど」