第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……というわけで、昨日から正式に彼女になったから。以後お見知りおきを」
翌日の部室。
後輩の練習前の着替え中、黒尾はわざとらしく小指を立てながら、最高にドヤった顔で報告をぶちかました。
「おっ、ついにやったか!」
「おめでとうございます! ホワイトデー決戦、勝利っすね!」
山本とリエーフが我が事のように盛り上がり、一緒に来ていた夜久も「やっとかよ、おっせーな」と呆れつつも口角を上げている。
研磨だけはスマホから目を上げず、「……昨日からずっとクロの顔がうるさかったから、知ってた」と呟いた。
「で、どうだったんすか! 夢の国でロマンチックな感じだったんすか!?」
リエーフがキラキラした目で食いつく。黒尾はフッと鼻で笑い、髪をかき上げた。
「まあな。最高のレストラン予約して、テラスでショー見ながらネックレス渡してよ。……完璧すぎて、あいつも泣いて喜んでたわ」
「うわ、寒っ……。でもまあ、クロにしては頑張ったんじゃない」
研磨の毒舌も、今日の黒尾には心地よいBGMでしかない。
だが、黒尾の表情がふと、微妙なものに変わった。
「……ただよ、ちょっと気になることがあってさ」
「あ? 惚気か?」
「いや。……あいつ、この前のカメラ仲間の話をしてた時についでに聞いたんだけどよ。……どれくらいの頻度でパーク行ってるか、お前ら想像つくか?」
「……月一くらい?」
夜久が適当に答える。黒尾は首を振った。
「いいか、よく聞けよ。あいつ、最低週一。……で、イベント期間中は『バイトと用事がない日はほぼ毎日』だそうだ」
一瞬、部室に静寂が訪れた。
「…………毎日?」
山本の声が震える。
「開園待ちから閉園までだ。ダンサーのシフトや光の当たり方が毎日違うから、とかいうアスリートみたいな理由で通い詰めてんだよ、あいつ」
「待て待て、それって……俺たちが毎日放課後、体育館でサーブ練習してるのと感覚一緒じゃねーか!」
夜久が叫ぶ。
「しかも、パークに行けば男女問わず『カメラ仲間』とか色々な知り合いが山ほどいるらしい。……あの日、俺が不審者みたいに尾行してた横で、あいつは実質、ホームコートで練習試合してたようなもんなんだわ」
黒尾の遠い目を見て、部員たちの表情から「祝福」の色が消え、じわじわと「戦慄」が広がっていく。
