第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「うん! あそこのベンチに座ってれば毎日誰かしらに会えるもん。……そういえば、クロは気にしてたけど、あの日のイケメンくんは、もうすぐパパになる奥さんがいるプロのカメラマンさんだよ?」
「…………あ、そう。……へぇー。……あ、そうなんだ」
急速に安堵の表情を浮かべる黒尾。
だが、次に続いた彼女の言葉に、今度は別の意味で言葉を失うことになる。
「で、お前……どのくらいの頻度でここに来てんだよ。年パス持ってるってことは、月一くらいか?」
「えっ? 月一?」
🌸は不思議そうに小首を傾げた。
「うーん、シーズンによるけど……最低週一かな。好きなイベントの期間は、バイトがない日はほぼ毎日いるよ」
「……まいにち?」
黒尾の足がピタリと止まった。
「そう。平日は放課後からだけど、休みの日は朝イチの開園待ちから、夜の閉園まで。だって、光の当たり方って毎日違うでしょ?ダンサーのシフトも変わるし、アドリブとかあるし、 昨日は撮れなかった一瞬が、今日なら撮れるかもしれないじゃない」
一切の迷いがない、真っ直ぐな瞳。
それは、バレー部が毎日体育館にこもり、一ミリのスパイクの角度を突き詰める姿にどこか似ていた。
「……お前、バレー部より練習(インパ)してねーか……?」
「えへへ、そうかも! 受験が終わったから、これからはもっと来れるしね!」
屈託のない笑顔で「毎日でも通いたい」と語る彼女に、黒尾は尊敬を通り越して、若干の恐怖すら感じ始めていた。
「……俺、ライバル多すぎじゃねーの。男とか女とかじゃなくて、この『夢の国』自体が最大の強敵(ライバル)だわ」
「何言ってるの、クロ。私にとっては、クロが一番の被写体なんだから」
そう言って腕に絡みついてくる彼女に、黒尾は勝てる気がしなかった。
「……わーったよ。週一だろうが毎日だろうが、お前の休日は俺が全部予約(リザーブ)してやっからな。覚悟しとけよ、ガチ勢」
「ふふ、望むところだよ。……キャプテン!」
電車のホーム、並んで座る二人の頭上には、現実の夜空が広がっている。
けれど、彼女が語る情熱に圧倒されながらも、黒尾はそんな「オタク」な彼女が愛おしくてたまらない自分に、苦笑いするしかなかった。