第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
パークに到着すると、春キ◯ンシーズンということもあってゲート前は凄まじい混雑だった。
黒尾も自分なりに「効率的な回り方」をネットで予習してきたが、目の前の人の波を見て、早々にプライドを横に置くことにした。
「……なぁ、🌸。俺も一応調べたんだけどよ……やっぱここは、プロの采配に任せていいか?」
「ふふ、いいよ! 任せて。春休みの混み方はちょっと特殊だけど、最短ルートで行くからついてきてね」
そこからは、まさに「カメラ女子」改め「パークの鉄人」の本領発揮だった。
彼女はスマホの待ち時間アプリと周囲の動線を瞬時に読み取り、混雑の合間を縫うようにアトラクションを案内していく。
「次はあっち。今からなら、ちょうどあのアトラクションの列が短くなるタイミングだよ」
「お前、本当にすげーな……。俺の予習、一ミリも役に立たねーわ」
「そんなことないよ。クロが『ここに行きたい』って言ってくれたから、私もルートが組みやすかったんだもん」
人混みの中、はぐれないようにと彼女がギュッと握り直してくれた手のひらが、何よりも黒尾の勇気を支えていた。
アトラクションの興奮と、春の柔らかな日差し。
時折、スマホで二人並んで、あのお揃いのカチューシャを着けて自撮りをするたび、画面に映る二人の距離は、少しずつ、けれど確実に縮まっていく。
「……あと数時間で、予約したディナーか」
黒尾はポケットの中の小さな箱を指先で確認した。
彼女が案内してくれるこの夢のような時間の終わりに、自分ができる最高の「時間」を。
夕暮れに染まり始めたパークを眺めながら、黒尾は静かに決意を固めていた。