第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……ふふ、やっぱりこれ、最高のショットだわ」
夢の国から帰宅した夜。
🌸はベッドの上で、今日撮り溜めた膨大なデータの整理をしていた。
マウスを動かす手が、ある二枚の写真の前で止まる。
一枚は、ショーの最中、レンズ越しに視線が絡み合った瞬間のもの。
自分を探していたのか、射抜くような熱を帯びた、真剣な黒尾の瞳。
そしてもう一枚は、目が合った直後、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で固まっている、驚きに満ちた「可愛い」黒尾。
「……こんな顔、私にしか見せちゃダメなんだから」
パレードのキャラクターやプロのダンサーたちよりも、ずっと心拍数を跳ね上げさせるその表情を、🌸はそっと愛おしげに撫でた。
彼女は迷うことなく、その二枚を自分だけが知るパスワード付きの『特別フォルダ』へと移した。
掲示板に並んだ自分の受験番号を確認した瞬間、黒尾は肺の中の空気をすべて吐き出すような深い安堵に包まれた。
それと同時に、脳裏に浮かんだのは🌸の笑顔だった。
すぐさまスマホを取り出し、震える指でメッセージを送る。
『合格した。約束通り、いい報告だわ』
返信は、数秒もしないうちに返ってきた。
『おめでとう、クロ! 信じてたよ!!』
その文字を見た瞬間、黒尾の中で「守り」の姿勢は完全に消え去った。
「……よし。次は、俺の番だ」
3月14日のホワイトデー。
黒尾は意を決して、🌸を「もう一つの海の方の夢の国」へと誘った。
高校生活も残りわずか、進む道が分かれる前に、このもどかしい関係にケリをつけると決めたのだ。
「あのさ、今度の14日、空いてるか? この前のバレンタインのお返しっつーか……その、また別の夢の国、行かねー?」
「えっ、いいの!? 行く行く、絶対行く!」
二つ返事で快諾した彼女に、黒尾は内心ガッツポーズを決める。
スマートにチケットを差し出して、「ここは俺が……」と男らしくエスコートする計画だった。
「じゃあ、チケット取らなきゃな。日付指定、俺がやっとくから――」
「あ、大丈夫だよ! 私、年パス持ってるからチケットいらないよ!」
「…………は?」
黒尾の動きがピタリと止まった。