第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……クロ? 顔赤いよ? カイロ、熱すぎた?」
「ちげーよ。……お前の、その……案内が完璧すぎて、感動してんだよ」
適当に誤魔化しながら黒尾はカイロを握りしめた。
パレードが始まれば、彼女はまた「カメラマン」の顔になるだろう。
でも、今はまだ、この温かいお茶の余韻に浸っていたかった。
「……なぁ、🌸」
「ん?」
「合格したら……今度は最初からちゃんと、二人で来ようぜ」
音楽のボリュームが上がり、彼女に聞こえたかどうかは分からない。
それでも黒尾は、隣にいる彼女の温度を確かに感じながら、光り輝くパレードの始まりを待っていた。
きらびやかな光を纏ったフロートが、すぐ目の前を通り過ぎていく。
いつもなら、この瞬間にシャッターを切る音が隣から聞こえてくるはずだが、🌸はカメラを置いたまま、ただじっと光の列を見つめている。
「……おい。撮らねーのかよ、カメラ女子」
黒尾が不思議そうに覗き込むと、🌸は少しだけ首を傾けて笑った。
「うーん、今日はいいかな。今は、クロと一緒にこの景色を楽しみたいし」
「……ッ、」
不意打ちのストレート。
黒尾は心臓をわし掴みにされたような衝撃に襲われ、咄嗟に反対側を向いた。
耳の先まで熱いのが自分でもわかる。
(……何だよそれ。反則だろ、そんなの)
パレードの光に照らされる彼女の横顔は、いつもの「スナイパー」のような鋭さはなく、ただただ穏やかで、柔らかい。
黒尾はもう、パレードのキャラクターなんて見ていられなかった。
視線はどうしても、隣で瞳を輝かせている少女へと吸い寄せられてしまう。
ふと、🌸が視線に気づいて顔を上げた。
「……クロ? どこ見てんの。ミ◯キー、あっちだよ?」
「あ、いや……」
「ふふ、もう。パレード楽しもう? せっかくの特等席なんだから」
はにかむように微笑む彼女に、黒尾はもはや白旗を上げるしかなかった。
「……あー、わーったよ。見るよ、見ればいいんだろ」
早鐘を打つ心臓を無視して、黒尾は大人しく前を向いた。