第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「こっち。ここ、ちょっとした隠れスポットなんだよね」
🌸が案内したのは、建物の影にある、数人立てばいっぱいになるような狭い隙間だった。
周囲の喧騒から少しだけ切り離されたその場所は、肩が触れ合うほどに距離が近い。
「……お前、本当によく知ってんな。迷子になる隙もねーわ」
「ふふ、伊達に通ってないからね。……あ、クロ、寒くない? 夜になると一気に冷えるでしょ」
そう言って🌸がカバンを漁り、使い捨てカイロを二つ取り出した。
一つを自分のポケットに入れ、もう一つを黒尾の手に握らせる。
「はい、これ。……それから、温かいお茶飲む? ほうじ茶だけど」
彼女が水筒の蓋を開け、湯気の立つお茶を自分で一口飲んだ後、そのまま「はい」と黒尾に差し出した。
「え……。あ、ああ……サンキュ」
受け取ったものの、黒尾の手が止まる。
(待て……これ、さっきあいつが飲んだやつだよな? 飲み口……同じ、だよな……?)
いわゆる間接キスという単語が脳内を強襲し、黒尾はフリーズした。
だが、隣の🌸はといえば、遠くで鳴り始めたパレードの音楽に耳を傾け、純粋な瞳でフロートが来る方向を眺めている。
一ミリも意識している様子がない。
(……全然気にしてねー。俺だけかよ、こんなにドギマギしてんのは)
少しだけ凹みつつも、黒尾は意を決してお茶を口に含んだ。
香ばしい香りと、彼女の体温が残っているような温かさが、喉から胃へと染み渡る。
「……あったまるわ。……ありがとな」
「よかった! クロ、試験休みで体調崩したら大変だもんね」
🌸が満足げに微笑む。
その笑顔が、イルミネーションの光を反射して、どんなパレードの電飾よりも綺麗に見えた。
今、自分は夢の国で、好きな女と二人きり。
少し前まで不審者さながらに尾行していた自分を思い出し、黒尾は猛烈に顔が熱くなるのを感じた。