第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「あー、俺と夜久さんはこっちの席! リエーフ、お前は海さんと座れ!」
「えー! 俺、🌸さんと隣がいいっす!」
「バカ、空気読めよリエーフ! ……はい、というわけで黒尾さんと🌸さんは、そこ、二人で座ってくださいねっ!」
山本の必死かつ露骨な誘導に、黒尾は内心で「ナイスだ山本……!」と親指を立てながらも、顔には出さない。
「……ったく、お前ら。……ほら、行くぞ。隣、いいか?」
「うん、もちろん!」
アトラクションが動き出し、急カーブや揺れがあるたびに、二人の肩が自然とぶつかる。
狭い座席の中、彼女の体温と、かすかに漂う甘い匂いが伝わってきて、黒尾の心拍数はどんな試合よりも跳ね上がっていた。
「……クロ、さっきから顔が固まってるよ? もしかして、絶叫系苦手だった?」
「……は? んなわけねーだろ。余裕すぎて、次の試験の問題のこと考えてただけだわ」
「嘘ばっかり。……ほら、手、手すりしっかり握って。次、落ちるよ!」
🌸が笑いながら黒尾の腕を軽く叩く。
その様子を後ろの席から見守っていた夜久と山本は、ニヤニヤとした笑みを隠そうともしない。
「……ねえ、夜久さん。黒尾さん、あんなに分かりやすくデレてて恥ずかしくないのかな」
「いいんだよ、あいつ、受験の間ずっと禁欲的な生活してたんだから、今日くらい好きにさせてやれ」
夕暮れ時の淡い光が、楽しそうに笑い合う二人の背中を照らす。
黒尾は、恩恵を与えてくれる仲間たちの気遣いに感謝しつつ、隣で瞳を輝かせている彼女を、今度はファインダー越しではなく、自分の瞳に焼き付けるようにして見つめていた。
「……もうこんな時間か。さすがに夜になると冷えるな」
黒尾が首元をさすりながら空を見上げると、パーク内は色とりどりのイルミネーションで魔法にかけられたように輝いていた。
短時間で主要なアトラクションを効率よく回った一行は、心地よい疲れと高揚感に包まれている。
「ねえ、そろそろ夜のパレードが始まる時間だよ」
🌸がスマホの時計を確認しながら、みんなに問いかけた。
「今からなら場所取りすればまだ間に合うと思うけど、どうする? パレードを見るか、その隙に空いてるアトラクションをもういくつか攻めるか……」