第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……ここ、ショーの抽選に外れた人が並ぶ自由席の列だね」
研磨がスマホで調べながら、げんなりした顔で列に並ぶ。
「クロ、これもう三十分は動かないよ」
「構わねーよ。あいつらがあの中で何を話してるか、突き止めるまではな……!」
黒尾の目は、もはや執念の炎でぎらついていた。
ようやく列が動き出し、会場内へ。
キャストの「お好きな席へどうぞ」という声に従い、🌸たちは迷わず一番後ろの端、全体を見渡せる立ち見エリアへと陣取った。
黒尾たちは目立たないよう、あえて反対側の立ち見エリアにポジる。
「……なあ。あいつら、一回もスマホ見ねーな」
夜久が呆れたように呟く。
対岸の四人は、一様に巨大なレンズを首から下げたまま、まるで円陣を組むようにして互いのカメラを覗き込んでいた。
「わあ、やっぱり師匠の写真は色の深みが違いますね!」
「いや、🌸のこのカットも、動体予測が完璧じゃないか」
そんな会話でもしているのか、四人の雰囲気はどこまでも明るく、そして「職人」の集まりのようにストイックだ。
「……ねえ、クロ。見てて気づかない?」
研磨が、反対側の四人を見つめながらポツリと言った。
「何がだよ」
「あのイケメン、さっきから🌸のこと『女の子』として見てないよ。どっちかっていうと……『有望な新人』を見る目だね、あれ」
「は? ……あー、言われてみれば……」
黒尾も目を凝らす。
確かに、男と🌸の間に漂っているのは、甘い恋の予感ではなく、同じ「被写体」を追い求める戦友のような、カラッとした空気感だった。
「でもよぉ……あんなに楽しそうに笑われたら、気が気じゃねーんだよ。俺たちにあんな顔、見せたことねーだろ」
「それは黒尾さんが、いつも変な顔でからかうからじゃないっすか?」
リエーフのド直球なツッコミに、黒尾は言葉を詰まらせた。
「……うるせー。……とにかく、あいつが何を撮ってんのか、この目で見届けてやる」
ショーの開始を告げるアナウンスが流れ、会場が暗転する。
反対側のエリアで、🌸が再び「狩人」の目になり、カメラを構える。
その真剣な横顔に、黒尾はまたしても、自分だけが知らない彼女の居場所に少しだけ、苦い焦りを感じていた。