第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
黒尾はというと、その場に固まったまま彼女を見つめていた。
だが、驚きはそれだけでは終わらなかった。
先頭のダンサーが視界に入った瞬間、二人の動きがピタリと止まる。
「――っ、来た」
🌸が低く呟いた。(ように見えた)
次の瞬間、二人は吸い付くような手つきでカメラを構えた。
さっきまでの笑顔は消え、瞳には獲物を狙うスナイパーのような鋭い光が宿っている。
ーーカカカカカッ!
凄まじい連写音が、音楽の隙間を縫って聞こえてくるようだった。
ファインダーを覗く横顔は、春高のコートで黒尾のスパイクを狙っていたあの時よりも、さらに冷徹で、プロフェッショナルなものだった。
「……おい、なんだよあの温度差。情緒不安定かよ」
黒尾が引き気味に呟く。
「……凄いっす。ダンサーさんの指先が止まる一瞬を、完全に『狩り』に行ってるっす……」
山本の言葉通り、二人は互いの位置を微調整しながら、最短距離で最高のショットを稼いでいく。
「……クロ。あいつ、多分あの男とデートしに来たんじゃないよ」
研磨が、どこか哀れみすら含んだ目で黒尾を見上げた。
「あれは……『共同戦線』か何かじゃないかな」
「知るかよ! どっちにしろイケメンと密着してんのは変わりねーだろ!」
激しい音楽と歓声の中、一心不乱にシャッターを切る🌸。
その横顔はあまりに眩しく、そして自分たちの知らない「情熱」に溢れていて――。
黒尾は、嫉妬を通り越して、何だか遠い世界のものを見ているような、得も言われぬ敗北感を味わうのだった。
パレードの熱狂が去り、ゲストたちが一斉に動き出す。
「よし、今度こそ逃さねーぞ」
黒尾が人混みをかき分け、二人に向かって踏み出したその時。
どこからともなく別の男女二人組が「お疲れ様ー!」「今の、最高だったね!」と親しげに🌸たちに駆け寄った。
「あ、出鼻くじかれた……」
リエーフが間抜けな声を出す。
合流した四人は、カメラ液晶を覗き込みながら「この角度、神!」「設定どうしたの?」と、尋常ではない盛り上がりを見せながら移動を開始した。
「……おい、また移動だ。追うぞ」
黒尾の指令で、音駒バレー部軍団は再び不審な行進を再開する。
たどり着いたのは、アトラクションではなく、とある屋外ショーの待機列だった。