第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……あ、見てください。あいつら、お互いの液晶画面を見せ合いながら笑ってますよ」
リエーフが実況する。
確かに、🌸は男のカメラを覗き込み、「わあ、すごい!」と言わんばかりに目を輝かせている。
男もまた、彼女の肩に手が触れそうな距離で、優しく微笑みながら何かを教えているようだった。
「……あー、イラつく。なんだあの男、優しそうなツラして。レンズの口径がデカけりゃ偉いと思ってんのか?」
「黒尾、八つ当たりがひどいぞ。お前、受験勉強の時より殺気立ってるからな」
海が苦笑いしながらたしなめるが、黒尾の耳には届かない。
「研磨、あいつら何て言ってるか読唇術でわかんねーの?」
「無理に決まってるでしょ……。でも、多分バレーの話は一ミリもしてないね」
「……クソがっ!!」
黒尾は腕を組み、指先で苛立たしく二の腕を叩いた。
自分たちが「春高」という戦場で汗を流していた間、彼女は外の世界で、あんな「王子様」みたいなカメラ仲間と、キラキラした時間を共有していたのか。
「……よし、行くぞ。偶然を装って突撃だ」
「待て黒尾! 今行ったらただの不審者だろ!」
夜久の制止も虚しく、黒尾は二人の方へ向かおとする。
夢と魔法の王国で、音駒の主将による「強行ブロック」が始まろうとしていたその瞬間、ファンファーレが鳴り響き、スピーカーから弾けるような音楽が溢れ出した。
パレードの開始で、通路が完全に遮断されたのだ。
「ちょっ、クロ! 今動いたらキャストの人に怒られるって!」
「クソっ、このタイミングでかよ……!」
足止めを食らった黒尾たちの目の前で、信じられない光景が繰り広げられた。
それまでしっぽりと語り合っていたはずの🌸とイケメンが、パッとカメラを置いたかと思うと、音楽に合わせて完璧な振り付けで踊り始めたのだ。
「……え、嘘。🌸さん、あんなキレキレに踊れんの!?」
「リエーフ、感心してる場合じゃないっしょ。……見て、あの二人、一糸乱れぬ動きなんだけど」
研磨の言う通り、二人は阿吽の呼吸で手振りをこなし、満面の笑みで楽しんでいる。
その姿は、長年連れ添ったダンスパートナーか、あるいは筋金入りの「常連」のそれだった。
「……楽しそうだな、おい」
夜久の乾いた声が響く。