第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……なあ、研磨。これ、部員たちに配ってるクランチよりは、明らかにランクは上だよな?」
「……うん。箱だしね」
「でも、お前と俺で、ミリ単位の差もねーよな?」
「……うん。全く一緒だね」
研磨は無慈悲に事実を突きつけながら、自分の箱をパカッと開けた。
黒尾は、もらったチョコが「特別枠」であることに安堵しつつも、研磨と完全に同等であるという現実に、複雑な溜め息をつく。
「……あいつにとって、俺はまだ『研磨とセットの幼馴染』から一歩も出てねーのかよ」
「文句言いながら、鼻の下伸びてるよ、クロ」
「伸びてねーわ! ……食うよ、食えばいいんだろ。糖分補給して、あと五時間勉強してやるよ」
黒尾はヤケクソ気味にチョコを一口で放り込んだ。
甘くて、少しだけほろ苦い、例年通りの味。
「……あー、クソ。早く受験終わんねーかな」
専門学校への準備でキラキラしている彼女の瞳に、自分一人が「特別な男」として映る日はいつになるのか。
黒尾のバレンタインは、決意と、ほんの少しのジェラシーを飲み込んで、夜更けまで続く勉強机へと戻っていった。
公立の前期試験を終え、自己採点の結果は「よほどのことがなければ合格」というライン。
しかし、慎重な黒尾は万が一に備えて今日も図書室の椅子に座っていた。
だが、ペンは一向に進まない。
隣でゲームを叩く研磨、斜め向かいで英単語に苦戦する山本やリエーフ、そして静かに本を読む夜久や海たちを見た後、黒尾はついに我慢できずに口を開いた。
「……なあ、やっぱりおかしいだろ。今日もあいつ、光の速さで帰ったぞ」
「クロ、それ今日で五回目。しつこい。試験休みなんだから、自由にさせてあげればいいじゃん」
研磨が画面から目を離さずに即答する。
しかし、黒尾のモヤモヤはもはや限界突破していた。
「バイトのシフトじゃないのは確認済みなんだよ。なのにあの嬉しそうな顔! 絶対に何かある。……おいお前ら、ちょっと俺に付き合え」
「は? 受験生の追い込みはどうしたんだよ」
「追い込みだよ! 心の平穏を取り戻すためのな!」
夜久が引いた顔で黒尾を見つめる。
「……お前、マジで言ってんのか? 元主将が女子の尾行とか、音駒のツラ汚しだぞ」
「人聞きが悪いこと言うな! 『幼馴染の安全確認』だっつーの!」
